千年女優

ミツバチと私の千年女優のレビュー・感想・評価

ミツバチと私(2023年製作の映画)
3.5
夏休みに母に連れられて兄や妹と共にバスク地方にある母の実家に訪れた八歳の少年で、自身の性に抱く違和感から髪を伸ばして本名も坊主を指すココの呼び名も嫌うアイトール。周囲の理解を得れぬ中で唯一人穏やかに見守る養蜂家の叔母との交流を経て、シラクサの殉教者と同じ「ルチア」を名乗り出す彼女のひと夏を描いた青春映画です。

スペインはバスクで生まれ育った女性監督で短編映画やドキュメンタリーで評価を高めたエスティバリス・ウレソラ・ソラグレンの長編監督デビュー作で、ベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映されると主演のソフィア・オテロの演技が絶賛されて銀熊賞と最優秀主演俳優賞を獲得。その後も様々な国内外の映画賞で高く評価されました。

『トムボーイ』を連想させる環境を新たにした性自認に悩む子供が主役の物語で、繊細な問題をじっくりと描き上げます。家族に理解者、宗教、バスクへテーマに広げて奥行きを狙う一方でやや視点定まらぬ所はありますが、決して劇的に誇張することなく丁寧な話運びで二万種があるとされる蜜蜂と同様、子供を安易に型にはめない一作です。
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