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マエストロ:その音楽と愛とのtorumanのレビュー・感想・評価

3.7
現代音楽の巨匠レナード・バーンスタイン(ブラッドリー・クーパー)とフェリシア(キャリー・マリガン)夫婦の生涯。

監督はブラッドリー・クーパー。
スコセッシ監督とスピルバーグ監督がプロデューサーとしてサポートです。
ブラッドリー・クーパー愛されてますね。

現在がカラーパート、過去がモノクロパートの構成。
また、前半がレナードを中心に、後半がフェリシアを中心に描く構成になっています。

前半は、レナードの成功と2人のロマンスを中心に、テンポの良いミュージカル調で描いています。

まるでワンカットのような流れるショットから、レナードとフェリシアの衣装が、歌舞伎の早替わりのように変わり、歌い踊る魔法のようなショット。
なんでも思い通りになる順風満帆な様子を見事に視覚化しています。

後半は、フェリシアのレナードの性癖に対する苦悩、闘病など暗い影を落とします。
フェリシアが中心になる事で、彼女の気持ちにスポットが当たり、前半は薄味だったドラマが俄然濃厚になっていきます。

大聖堂でのマーラーの演奏から夫婦の和解に繋がるエピソードは、ご都合主義にも感じましたが、ここは音楽の力と映像の力でグッと惹きつけられました。

W主演については、ブラッドリー・クーパーのメイクと5年間特訓した指揮の場面は素晴らしいのですが、レナードの性格の掘り下げが浅いのか…全く共感できませんでした。
結果的には、フェリシアの揺れ動く感情を見事に表現したキャリー・マリガンの演技が印象に残りました。
(これは監督の狙いかも知れませんが)

レナード・バースタイン個人の人生が成功の連続でドラマ性が乏しく、共感も難しい為、ドラマパート(特に前半)が今ひとつに感じました。

しかし、それを補うように役者の演技・音楽・映像・編集が第一級なので豊穣な映画体験を味わえます。
劇場で観たらもっとスコアが上がったと思います。

何を求めるかで評価が分かれると思いますが、全体をまとめあげたブラッドリー・クーパーの監督の才能は本物でした。
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