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キングダム 運命の炎のsanbonのレビュー・感想・評価

キングダム 運命の炎(2023年製作の映画)
3.8
マンガ的ハッタリがキツくなってきたか?

今年は、やたらと分作にする作品ばかりが公開されまくっている年となっている。

「仕掛人・藤枝梅安」「東京リベンジャーズ」「ワイルドスピード」「スパイダーバース」「ミッションインポッシブル」

僕が把握しているだけでもこれだけある。

そして、今作はもともと連作ものではあるが、更に「馬陽攻防戦」を2作に分けて制作されているから、間違いなく分作のカテゴリに分類される。

これらに通じる共通点は、"完結編"と銘打たれている事だろう。

話題作であったり、長きに渡り続いてきたシリーズなんかが、ラストを壮大なものにする為にこの手法に手を出し、それがたまたま今年集中してしまっただけなのだろうが、それにしても多すぎる。

別に否定はしないのだが、やっぱり映画は単体で綺麗に終わってくれないとどうしてもスッキリはしない。

続きが観れるのが概ね一年後だったり、そもそもが高い料金を支払って観ているのに、途中までしか観させてもらえないところにモヤモヤは隠しきれないところはあるだろう。

今作のエピソードも、作中実質一番人気キャラの「王騎将軍」最大の見せ場という事もあり、後編へ引っ張るような構成としたのは理解するが、本音を言えばそこが最も早く観たい。

なんなら、2〜4まで一気に撮影したんなら2ヶ月おきくらいに公開出来るくらいの段取りをしてから本当は封切られて欲しかった。

また「キングダム」は、原作ですら始皇帝誕生から見るとまだまだ中盤以下のところをやっているくらい気が遠くなる長さだから、映画も作ろうと思えば無尽蔵に続けていける作品となっているのだが、そうなると見境がなくなるし物理的にも無理が生じてくるだろうから、明言はされてはいないが次作が完結作とみていいだろう。

というか、今作を観て確信したが、いくら人気があり評価が高かろうがこのシリーズを長く続けるのは正直得策ではない。

それは、戦の描写があまりに漫画的になり過ぎてきているからである。

今作は「飛信隊」が、敵の大将である「馮忌」を討ち取るまでが映像化されているのだが、二万もいる「趙軍」の中に百人隊で突撃し、将の首をとってくるという超難題を実写に落とし込んだ上、キャラクター達の漫画特有の掛け合いをそのまま展開に乗せて演出するのは、流石の流石に無理があった。

しかし、圧倒的な数的不利のなか「秦軍」は、農民や戦経験に乏しい寄せ集めばかりという状況の中で、無謀な特攻で活路を切り拓いていく流れをそれっぽく見せるには、どうしてもマンガ的なハッタリに頼る他ない。

それは、一作目から所々感じる部分ではあったが、前作まではそれが「信」のワンマンパワープレーに留まっていたからまだ良かったが、今作からは飛信隊としての活躍が描かれる分、映像的なありえなさは格段に悪目立ちしはじめていた。

それこそ、二万対百の絵面はどう考えても勝ち筋が無く、主要な仲間が全員無事でいられる訳がないと思ってしまう程なのだが、それを凌ぎ切る信憑性が実写だと何も生み出せていない。

また、信と「羌瘣」の2強が急先鋒を担って馮忌の首を狙いに行くアクションも、実写として見てしまうと実に突飛であり、なんでもあり感が強くなってしまっているので、今回のクライマックスは個人的にはアツい展開とは感じにくかった。

原作だと、これからどんどん現実離れが顕著になっていくし、スケールもどんどんデカくなってくるが、結局実写にすると変わり映えのしない荒野での絵面になってきてしまうから、シリーズ的にもここらが潮時でいい気がする。

続く限りは観に行くが、引き際も肝心だと思った。
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