千年女優

君たちはどう生きるかの千年女優のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.5
1944年。東京大空襲で母を亡くした少年で、工場経営者の父が再婚した母の実妹ナツコが身籠ったために母方の実家に疎開した牧眞人。周囲と打ち解けられぬ日々の中で庭に大叔父が建てて廃墟となった塔を見つけた彼が、ある日失踪した叔母を探すため喋るアオサギの誘導で塔の中の不思議な世界に足を踏み入れる様を描いたアニメ映画です。

日本映画史に残る巨匠で前作『風立ちぬ』後に引退を宣言した宮崎駿が、傘寿を迎えて前言を撤回して再び筆を執って完成させた作品で、タイトルが1937年に発表された吉野源三郎の教養書にちなみ、自伝映画でありファンタジーとの鈴木敏夫の言葉はありながらもその他の情報はシャットダウン。当日まで宣伝なしを貫いて公開を迎えました。

少年が叔父との対話で思考や生の何たるかを知る原作を踏襲し、かつての少年との対話を通しての本作含め長編13作を残した軌跡の脱構築を得意とする『不思議の国のアリス』型ファンタジーで綴ります。彼をして「集大成」の枠に留まることに一抹の寂しさは残りますが、自らの生き様をして生を問う選ばれし者の気高き驕りを貫く一作です。
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