モモモ

君たちはどう生きるかのモモモのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ポスター1枚のみで予告編も無ければキャストも未発表。
普段から事前情報は可能な限りシャットアウトして鑑賞に臨んでいるのだが、宮崎駿新作で、ジブリ映画で、この規模のアニメ大作で、ここまで徹底して「どんな映画か判らない」まま観れた事に価値がある。
「風立ちぬ」で終わらずに本作を作った理由、意義をハッキリと認知出来る異色のファンタジー作品。
「物作りに没入する身勝手な俺を許してくれ」と説いてから10年、「俺の跡を継いでくれ」との曽叔父の意志を継がずに「地獄で無意味な現実」を生きる選択を取る映画を作るとは。
「映画作り映画」であり「私にとってフィクションとは何か、現実とは何か」を描く内省作品でもある。
シン・エヴァと同じ着地点、肯定を感じたのは僕だけではないだろう。
正直、歪な映画だ。
ハウル、ポニョから顕著になった構成の歪さが熟してしまった。
ジブリ単独出資でこの歪な作品…本作は宮崎駿の自主映画に違いない。
母性が強いヒロインの行く末は母そのものだった。
冒頭の火事のアニメーションに心奪われた。
今の宮崎駿演出、今のアニメーター達、今のジブリ映画。
そう胸を張って断言する「アニメの力」を感じる名画面だった。
森の先には「この世ではない世界」が続いていた「行きて還りし物語」はトトロで、千と千尋で、間違いなく宮崎駿作品だ。
今回、違うのはその「異世界」を作った存在が人間である事。
戦時中、人が人と殺し合う時代から離れた「想像」と「創造」の世界。
しかしそこは極楽に満ちた桃源郷ではなく「死に満ちた」地獄の様な楽園。
所詮は「人が作った物」と言う事だろうか。
母の死の無念、新たな母(伯母)への許容、そして「男らしい父」との心の融和…を描き切ったかと言われたら、そこは物足りず。
ここに歪さを感じてしまうのだが、それも「自主映画」なのだから「そういうもの」として受け入れる他ないのだろう。
老婆達の活き活きとした躍動感、炎、シンプルな「人間となる」キュートな生命体。
贅沢なアニメーションが眼前に広がるだけで幸福感を抱く事が出来る。
曽叔父とは亡き高畑勲の事なのだろうか(それとも鷺のほうか?)
「生きねば」に立ち返る物語。
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