ヒノモト

みなに幸あれのヒノモトのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.1
「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というテーマの上で、祖父母が暮らす田舎へやって来た看護学生の孫が、祖父母の家にいる何かとその村の違和感に対峙していくお話。

初日の舞台挨拶回にて鑑賞しました。
冒頭に前述した幸せの尺度の他者比較を村の慣習に凝縮させた極端な設定自体の驚きはあるし、それなりのインパクトの強いシーンもあり、その宿命を背負った光景の数々は、その脈略の不透明さから、不条理ホラーのような雰囲気を醸し出しています。

ただ、現代劇としてのホラーを成立させるための説得力を持たせるためには、なぜ主人公だけがこの因習を知らないのかに疑問が残るため、主人公の行動原理、行動の原動力が不明瞭に感じてしまい、幼なじみとの関係性やその顛末も、その動機に至る何かも不明瞭で、現象としての不条理さは創作の自由ですが、映画としての道筋、観る側がどう受け取るべきかは、明瞭にすべきだったように感じました。

あと、不条理な現象自体は充分見せ場として機能しているので、テーマを延々と語る登場人物がいたり、異質な状況説明の台詞などは、不条理感やその世界観を薄めてしまうので、必要なかったと思いました。

上映後の舞台挨拶で、製作過程や撮影時をお話を聞くことができましたが、主人公を古川琴音さんが演じられたこと自体は大変良かったように感じた分、カットや間合いを調整して、不条理さを笑えるくらいに変換できれば、また違った味わいになったとも思いました。

最後に、マスコミ関係者のPCタイプ音は舞台挨拶の邪魔でしかなかったです。
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