Sayawasa

怪物のSayawasaのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

公開日翌日の劇場は人が多かった。テーマ的にめちゃくちゃ好みで、パンフレットもちゃんと買った(内田樹の解説がよかった!)。

本作品をLGBTQの話題と密接に絡めることには正直かなり違和感。
人間同士が有する死角を三つの構成で記述し、人は信じたいものを信じて見たいものを見るのだというどうしようもない性をふんだんに見せにくるあたり、本当に示したいのはそこ(青年が同性に性的な感情を持つことの苦しみや、青年期の「周囲」をベースとした社会とそうした指向との相容れなさ)じゃなかろう?と。二人のクィア青年を主人公に据え置くあたりの新規性は目新しいものの、そこが主筋じゃない気がしてならない。

安藤サクラと瑛太が土砂降りの中、窓の泥を掻き分ける→雨が降って元に戻る→掻き分ける、を繰り返すシーン。あれを下から撮るというアイデアがものすごいなと思う。映画内で、一番目を惹かれた。
わたしには闇に星が瞬いて、また消えて、瞬いて、という感じで、息子や生徒といったわかり合いたい相手に対する届かなさを表しているように思えた。  

誰もが怪物となり得る世の中で、自分が自分らしく、好きな人たちと関わっていくために何ができるんだろうなと考えたけど、そもそもわかり合おうとしない人を前に人は無力にならざるを得ない気がする。
だからこそ、自分が怪物となりえないように、わかろうとするスタンスを持つよう努力する以外結局できることはないのではないかと。

近代哲学における疎外の概念を復習しなきゃ