サマセット7

ゴジラ-1.0のサマセット7のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.9
ゴジラシリーズ30作品目(日本国内の実写映画として)。
監督は「ALYAYS三丁目の夕日」「永遠の0」の山﨑貴。
主演は「桐島、部活やめるってよ」「るろうに剣心京都大火編」の神木隆之介。

[あらすじ]
太平洋戦争末期の日本。
特攻隊員の敷島浩一(神木)は、零戦の故障により帰投した大戸島で、恐竜のような巨大生物が基地の兵隊を殺戮する場面に遭遇する。
生物は現地で「ゴジラ」と称されていた。
戦後、東京に帰還した敷島は、戦災孤児の赤ん坊を連れた女性・典子(浜辺美波)と出会い、生活を共にすることになる。
機雷処理の職を見つけ、仲間を得た敷島だったが、1947年、日本近海に、巨大生物が出現する。
それは、ビキニ環礁での核実験によりさらに巨大化した、あの日見た怪獣「ゴジラ」であった…!!

[情報]
ゴジラ生誕70周年記念作品。
日本の実写映画としては、シンゴジラ以来、7年ぶりのゴジラ作品となる。
これは、ハリウッド版ゴジラの公開年と同年には、契約上、東宝はゴジラ映画を公開できないから、とのこと。

前作シン・ゴジラは、新世紀エヴァンゲリオンで知られる庵野秀明監督のもと、震災をモチーフに、全く新しいゴジラ映画を生み出し、記録的なヒットとなった。

その後を受けるゴジラ映画の監督として、東宝が白羽の矢を立てたのが、山崎貴監督である。

山崎貴監督は、「ALWAYS三丁目の夕日」で日本アカデミー賞監督賞を受賞した、邦画界随一のヒットメイカーである。
もともと特殊撮影、デジタル合成などを手掛けており、VFXを得意とする。
他方フィルモグラフィーには「ドラゴンクエストユアストーリー」など、テーマ性や脚本について賛否が分かれる作品もある。

今作は、第1作の1954年版「ゴジラ」が舞台にしていた時代1954年よりも、さらに前の時代、1945年から1947年の終戦直後の日本にゴジラが襲来する様を描く。
山崎貴監督は「永遠の0」「アルキメデスの大戦」「ALWAYS三丁目の夕日」とこれまでに戦中、戦後を舞台にした作品を手掛けて一定の成果を得ており、今作でも得意な時代で描いたものと思われる。

タイトルは、戦争によりゼロになった日本が、ゴジラの襲撃でマイナスになる!という意味と思われる。

本日で公開10日目。興収は21億円を超えたとされており、スタート時の成績比では、ヒット作となった前作シン・ゴジラを超えているとのこと。
私が見る範囲では、概ね好評を得ているように見える。

[見どころ]
山崎貴監督が全力で挑む、「怖い」ゴジラ!!!
これぞ、日本のCGの本気だ!!!
やはり、伊福部昭のゴジラ音楽は、最高!!
アガるー!!!!
山崎貴節が響き渡る、人情もの風ドラマ!!
ここは何丁目の夕日なのか!!!!???

[感想]
ALWAYS三丁目の夕日のドラマパートに、ハリウッド版ゴジラの怪獣シーンを加えたような映画だ、というのが感想。

もともと、私がゴジラ映画に最も期待しているのは、ゴジラが人間社会を破壊するカタルシスである。
今作はそこをよく描けていた。
特に序盤から中盤にかけてのゴジラの容赦のなさは、なかなか凄い。
今作のゴジラはフルCGだろうが、迫力は、ハリウッド版にも劣らない。
ファン期待の熱線の描写も、過去作に負けずに気合が入っていて、評価したい。

ゴジラ映画において、人間ドラマパートは、ゴジラの出るシーンを邪魔さえしなければ良い。
良くも悪くも山崎貴節全開のドラマパートは、くどい面やクサイ面もあったが、ギリギリ邪魔とまでは言えず、許容範囲内か。
個々の演技には触れない方が吉だろう。
安藤さくらさんは、相変わらず良かった。
子役の子は可愛いかった。

終盤は、製作者の語りたいモノありきで、予定調和にも思え、個人的には、少し物足りなく感じた。
伊福部さんの音楽は、最高だったが!!!

全体として、ゴジラ映画としては、かなりよく出来た映画だったのではないか。
私は楽しんだ。

[テーマ考]
今作は、困難に抗って、「生きる/生かすために戦う」ことを礼賛する作品である。
死ねなかった/殺さなかったことの後悔を抱える元特攻隊員の敷島は、終戦後も苦しみ続ける。
そんな敷島が、最後、何のために絶望的なゴジラとの戦いに身を投じたか。
そこに、今作のテーマがある。

やや疑問もある。
それって、現代では当たり前ではないか?
そんな当たり前のことを言うために、映画一本作る必要があるのか?

過去、ゴジラが日本を襲撃する作品では、常にゴジラは何らかの恐怖のメタファーであった。
第1作では、核兵器と戦争の。
シン・ゴジラでは、地震と原発の。

今作において、ゴジラは何のメタファーか。
それは、戦争という、国家の暴挙に巻き込まれ、死んでいった戦没者の怨恨、というべきものだろうか。
終盤の戦闘シーンの最後の描写は、参考になるかもしれない。
とはいえ、それを、現代の今、感じるべき恐怖として描く意味があったのか、はよく分からない。

ウクライナ、イスラエルと続く戦乱のニュースに照らすと、今作のテーマは意味を持つだろうか?
あるいは、所詮は平和な国で作った、お気楽な作品とテーマ、であろうか?

[まとめ]
ヒットメイカー山崎貴監督による、CG技術を駆使した、良くも悪くも山﨑節全開の、令和版ゴジラ映画。

私の好きなゴジラ映画は、初代以外では、84年版「ゴジラ」と89年の「ゴジラvsビオランテ」そして、2016年の「シン・ゴジラ」である。
やはりゴジラは、人間の脅威でいてくれた方が、面白い。