ゆめたろう

ゴジラ-1.0のゆめたろうのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
2.0
説明台詞に過剰な演技を繰り返すドラマパートのどうしようもなさはともかく、登場人物全ての造形の作り込みが甘すぎる。
作中描かれる戦時中の日本兵は坊主頭ではないのはもちろん戦後でもシラミが存在しない時代線なのか、男性キャストの長く油ぎってもいない清潔感漂う髪型。遠巻きに映る帰還兵は一応坊主姿でタバコを吸わせているところがやけに作為的で居心地が悪い。主要人物がどうしても現代人が転生した物語のように見えてしまう。このディテールの低さは一体なんなのだろう。物語の求心力も説得力も生まれない。

真昼間に登場する潔さに加え、ゴジラ本体のVFX技術は明らかにレジェンダリーゴジラに挑戦状を叩きつける様な気合いの入れよう。
しかし銀座の街も遠景を映さないため画面の抜けが悪く、全体的にこじんまりとした窮屈な印象を受ける。これはゴジラシーンだけでなく、主人公宅半径10メートル程しか映さないドラマパートでも同じである。終始箱庭感覚が強く、巨大怪獣が蹂躙するにはせまっくるしい。

当時の時代性から考えても、女性がサポート役に回ることは致し方ないとは思うが、令和の時代に明らかにジェンダーロールが過ぎる点が目立つのもいかがなものか。
ストリート系のおてんば娘でも擬似家族の妻的立場になれば急におしとやかになったり、母性があれば嫌味な隣人から乳母役に変貌したり。外見はともかく中身まで全くの別人へと生まれ変わるのなぜ?
彼女たちが環境要因により相応の時間をかけ自然に変化する物語を省略することで得られるものとは一体なに?
物言わずに手っ取り早くサポート役に回ってもらいたい男性側(制作側)の都合の押し付けにしか見えない。これはグロい。

台詞では「この国は命を粗末にしすぎた」等々もっともなことを言っているのだが、全体を通して自然とにじみ出る右翼臭さがキツい。「今度こそは勝とうや」って先の戦争では一方的な被害者であると本気で信じているのだろう(おぞましいことに復員兵が口にする)。
作家本人も気づいてないだけに、本当にどうしようもない作品。