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ゴジラ-1.0のMOCOのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
5.0
「何が浩(こう)さんをそんなに苦しめているの?」
「俺は特攻から逃げた人間です・・・」


 正直、カラーのゴジラ映画から入った私にとってコジラは人類のために他の怪獣と闘ったり、他の怪獣と共闘する人間寄りの怪獣なのですが、山崎貴監督だからきっと容赦なく人類に攻撃を仕掛ける大人向けの真面目な、遊びのないゴジラで来るだろうと思っていました。
 最近の映画はYouTubeなどで事前の動画情報が多すぎて、何らかの情報が目にはいってしまうのですが、今回は監督はじめ事前に試写された関係者にも箝口令?が出ていたみたいで、予告編の情報だけなのはとても良く、子供の頃味わった映画の楽しみがありました。


 1945年母親から、戦争が終わったら帰ってくるように言われていた特攻隊員の敷島浩一(神木隆之助)は、飛行機の故障と偽り大戸島の飛行場に降り立つのですが、優秀な整備士橘(青木宗髙)に『嘘』を見破られてしまいます。
 その夜、飛行場に大戸島の伝説の怪獣ゴジラが現れ、敷島は橘に乗ってきた零戦の機銃で怪獣を撃つよう言われ、照準を合わすのですが怖じけ付き引き金を引くことができず、怪獣は基地を壊滅させ橘と敷島以外の隊員を皆犠牲にして海に帰っていきます。橘は機銃を撃てなかった敷島に責任を問い敷島をなじり・・・。

 戦争が終わり焼け野原になった東京に帰った敷島は、帰還を切望した母親と父親と自宅を失っていたことを知ります。
 その東京で戦争犠牲者となった生まれて間もない他人の赤ん坊を抱いた若い娘大石典子(渡辺美波)と出会います。
 頼るところもない典子は勝手に敷島の住む小屋に転がり込み3人の家族ではない家族の生活が始まります。

 小さな明子を育てるため敷島は、相模湾に撒かれた機雷を爆発して取り除く高額の仕事を見つけて、船長の秋津(佐々木蔵之介)、野田(吉岡秀隆)、水島(山田裕貴)が乗る船に乗り込みます。

 やがて4人は極秘の怪獣退治に駆り出され、巨大化したゴジラに襲われ、回収した機雷を爆発させ抵抗します・・・。

 敷島の高額の給料でそこそこ生活が安定し始めた3人ですが、典子は復興し始めた銀座で働き始めます。

 ある日突然東京に上陸したゴジラは銀座の街で大暴れし、ラジオでニュースを聞いた敷島は典子を迎えに銀座に行きます。
 ゴジラの破壊光線の反動の爆風から敷島を助ける為に典子は吹き飛ばされ命を落としてしまいます。お互いが必要としながらも「好き」ということを伝えることもなく・・・。

 敗戦で武器となるものを全て米国に押収されている日本人は、国としてゴジラに対抗する全はなく民間の有志が集まりゴジラに対抗するチームが作られます。
 戦時中技術士官として兵器開発をしていた野田はゴジラ遭遇経験のあることからチームの中心となり「一度訪れた東京はゴジラの縄張りとなりゴジラは必ずやって来る」と仮説をたて、ゴジラを相模湾の深海に沈める奇抜な計画を立案します。
 敷島ら4人は海でのゴジラ遭遇でゴジラは強靭な皮膚で覆われているが、内側からの攻撃に弱いことを経験で見ているのです。

 敷島はゴジラを誘導するための戦闘機を求め、野田は米国の回収を逃れた未整備の試作機『震電』を見つけてきます。
 敷島は大戸島以前から面識があり、技術力の高い橘を手を尽くし探しだし『震電』を特攻用に改造することを依頼します。
 敷島はいざとなったらゴジラの口に飛び込むつもりなのです。
 自らの戦争に決着をつけるべく・・・
 典子の復習を果たすべく・・・
 明子の住む東京を守るべく・・・

 野田達の知らないところで敷島に改造された 『震電』は敷島の知らないところで橘の改造を受け上陸したゴジラの元へ向かいます。

『震電』を追うようにゴジラは相模湾へ誘い出され、野田の計画通りにゴジラは深海に沈んでいくのですが、求める結果には結びつかず再び海面に姿を現します。
 打つ手を失くし絶望的なその時『震電』が低空で・・・


 少しも人間寄りではない大人向けのゴジラは子供の頃のイメージとは全く違うけれど期待以上の仕上がりでした。
 納得できるストーリーがある「ゴジラ」を観たのは初めてかもしれません。
 変に総理大臣とかで大御所俳優とかを配してないところもよく、奇妙な柵(しがらみ)や媚を感じさせませんでした。
「ゴジラ」に感動したのは初めて。監督のゴジラへ対する特別な想い『ゴジラ愛』がひしひしと伝わって、安易な気持ちでは作れないという想いが溢れていました。「シン・・・・」とはレベルの違いを感じてしまいました。

 私は最近の海外版ゴジラの容姿が好きなのですが、今回のゴジラはどちらかと言えば海外版寄りのゴジラに感じてとても良かったです。
 

 この後のゴジラを作る事が出来る監督ってこの人しかいないですよね。
 真面目に作ればストーリーが難しそうですが、成虫のモスラやラドンや宿敵キングギドラの出てくる「ゴジラ」の映像が観たくなりました。きっと山崎貴監督なら神々しいモスラやラドンやキングギドラを魅せてくれるだろうと・・・。
 それを期待させるかのようにエンディングの手前には続編を匂わせる映像が・・・。
 そして深海ではゴジラの復活が・・・。
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