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東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-のsanbonのレビュー・感想・評価

3.8
原作付きの実写映画としては大健闘。

「東京リベンジャーズ」のクロスメディア作品の中で、僕はこの実写映画版が一番好きだ。

理由は、"再現性の高さ"にある。

第一に、キャスティングが神がかり過ぎている。

今が旬の俳優ばかりを揃え、それをそれぞれのキャラクターのイメージにぴったりと当て嵌める配役を実現させたスタッフは本当にすごいと思う。

中でも「稀咲鉄太」役の「間宮祥太郎」と「三ツ谷隆」役の「眞栄田郷敦」が今シリーズ中では特に好きなのだが、それ以外のキャラクターも原作よりも格段にカッコいい。

そう感じるのは、どう考えても俳優陣が元々持っているポテンシャルに"キャラクターの方が引っ張られているから"だと思うし、原作キャラを無理なく再現させることに成功したスタッフの"スタイリング力"にあると思う。

そして第二に、"現実的な改変"による再現性の高さだ。

前作のレビューにも書いているが、原作の設定では中学生が人殺しを伴う喧嘩を日常的に繰り返すという、あまりにも退廃的かつ非現実的な内容が主である事から、そんな義務教育も未だ済んでいない奴らがいくら凄んでカッコつけようが、その根底を思い出すと結局こいつらガキンチョなんだよなぁと、個人的に結構シラケてしまう要因ともなっていた部分を、年齢を底上げする事によりまだ許容できるようにしていたり、絵だとどうしても過剰に演出しすぎて死んでいないのがおかしいと思えるような過激な描写も、実写化するにあたって悪く言えば生ぬるく、よく言えば現実的な範疇に留めておいてくれている。

これにより、原作にあった"破綻している"と感じる部分を、整合性が保たれたような展開へと上方修正してくれている。

これは、設定や描写にとどまらずキャラクターの心理描写にまで及んでいる。

ここからは、あくまで個人的見解だが、この作品の一番好きになれない点はキャラクターに共感が持てないところにある。

物語を無理に劇的に動かそうとするあまり、登場人物の中に異常者が多過ぎるのだ。

そのせいで、展開に納得がいかなくなったり、そもそも矛盾が生じてきてしまったりしている。

この「血のハロウィン」編でも、なぜ「場地圭介」は真実を仲間に隠す必要があったのか、なぜわざわざ仲間と敵対する必要があったのか、なぜよりによってあの結末を選ばなくてはならなかったのかが、真実が明かされるとますます理解出来なくなってくるし「羽宮一虎」に至っては存在自体がただただ理解不能で、あんな事をしでかしておいていくら許されたからといって、生存ルートから先もよくものうのうとメンバーの中に居残れたなとその無神経さには驚く他ない。

そもそも、仲間との絆を土台にして物語の構築を計っているのにも関わらず、いつも突拍子もなく仲間意識が芽生えたかと思えば、それを育む描写もあまりない中で、あまつさえ命まで賭けてしまうというのも、急展開が過ぎてなんかとてつもなく信憑性に欠ける。

正直に言ってしまうが、原作漫画はかなり出来の悪い作品だと思っている。

ヤンキー漫画にSFとミステリ要素を掛け合わせるというアイデアばかりが先行した"見切り発車"でしかなく、それを一切飼いならせていないまま終わってしまったと感じる。

それでも、女性人気のおかげなのか超人気作品に変わりはないから、その事実こそが全てでそれが正義なのかもしれないが、今回の実写映画化はそもそもそんな"いけ好かない"ストーリーをよくぞここまでまとめたものだと「英勉」監督には賛辞を贈りたい。

内容も、3部作の中では今作が一番面白かった。

約90分という尺も、バチボコやってるだけの映画なら順当な時間割だったと思う。

更に、バチボコやってるだけの映画にするためにも、前後編に分けて制作したのは正解だと感じる。

次作への期待を煽るような、引きのあるラストも中々良かった。

でも、次の「聖夜決戦」編は本当にひどい内容だから、残念ながら実写化はしなくていいと思う。
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