masahitotenma

それでも私は生きていくのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

それでも私は生きていく(2022年製作の映画)
3.3
「未来よ こんにちは」のミア・ハンセン=ラヴが、父親の介護体験をもとに発表したヒューマン・ドラマ。
カンヌ国際映画祭ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞受賞。
原題/Un beau matin(2022、114分、R15+)

5年前に夫を亡くしたサンドラ(レア・セドゥ)は、通訳の仕事をしながらパリの小さなアパルトマンで、8歳の娘リン(カミーユ・ルバン・マルタン)を育てている。
父ゲオルグ(パスカル・グレゴリー)は哲学の教師だったが、難病で視力と記憶がすっかり衰え、介護施設に入ることに。
仕事と子育てと介護で自分のことを後回しにしてきたが、夫の友だちだった宇宙科学者クレマン(メルヴィル・プポー)と再会し、妻のいる彼と恋に落ちる…。

~他の登場人物~
・母フランソワーズ(ニコール・ガルシア):夫と別居し、恋人と住んでいる。
・父の恋人レイラ(フェイリア・ドゥリバ)

「本人よりも本を見る方がパパを感じる。
どうして?
施設にいる人より、書棚の方がパパらしいから。肉体と魂の違いってこと。
他人が書いた本だよ。
でも選んだのはパパだよ。選んだ本から人間性が見えるのよ。それぞれの本に色があって、合わせるとパパの肖像画になるの」

「大切な人が3人いる。○○、それから○○だな。それが事実だ。それから、3番目の人は…
3番目に大切な人は誰?
誰だろう。分からない」

「さまざまな症状からなる"ベンソン症候群"だ。産業医が言うにはアルツハイマー病ではないが、神経変性疾患、視神経疾患に分類されるらしい。不治の病を患った」

「パパのノートに自伝のタイトルがあったの
○○。
意味は?
"ある晴れた朝"」

スウェーデンの作曲家のヤーン・ヨハンソンによるピアノ曲「Liksom en herdinna 」が美しい。
邦題は原題どおりでよかったのではないか。
いつの頃からかフランス映画は"体の交わり"の映像を入れないと気が済まなくなったようだ。
それと、相手の配偶者や子どものことを考えない、"新たな恋愛"至上主義(※個人主義かエゴイズムか?)。
ラストも今風のフランス映画らしく結論を出さず曖昧に終わっているが、シングルマザーへの応援歌にはなっている。

※カール・ポパー「開かれた社会とその敵」読んでいたら、次のような図式を提示して、対立関係の言葉を定義していました。
個人主義←→集団主義
エゴイズム←→博愛主義
masahitotenma

masahitotenma