ヒノモト

彼女はなぜ、猿を逃したか?のヒノモトのレビュー・感想・評価

4.3
東京フィルメックスより、『ある朝スウプは』の髙橋泉監督作品にして、映像ユニット「群青いろ」の自主制作による最新作。

動物園の檻を壊して猿を逃がし、逮捕された女子高生・未唯の取材を始めるルポライターの優子が、週刊誌記事などで歪曲された報道される中、真実を探ろうとするが、その追究が彼女の精神の均衡を崩していくというお話。

後半に明かされる今作の種明かしは、ミスリードに見せかけるタイプで想定内なのですが、そこで終わらずに、その後そこまでの映像を踏まえた上で、本当の意味の猿を逃がした真相の見せ方が、物語の余白、または邂逅として、さりげなく表現されていることに大変驚かされました。

自主制作というスタイルで描かれる内容の振れ幅、自由度は高いですが、前半に観客が感じる違和感をそのまま映画内に投影して、後半それ自体を内包し、世代交代のバトンのように、シフトさせていくラストも美しかったです。

ネタバレせずに、内容に触れるのが難しいですが、インタビューしているシーンの意味と週刊誌記事の時間軸の違和感、映画内の現実とフィクションの境目の切り返しの見事さがあり、演技の捉え方すらも見越した作りになっていて、満足度は高かったです。

今後どのような形で公開されるか分からないですが、広く観られるといいと思います。

本編ショットと舞台挨拶の写真を含むブログは以下にて。
https://ameblo.jp/hinomoto-hertz/entry-12773557414.html
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