偶然出会ったフランクリンから“ミュール(麻薬を胃の中に飲み込んで密輸する運び屋)”の話を聞いた彼女は、危険だと知りながらも5000ドルという報酬に仕事を引き受ける。
3人のミュールとともに麻薬を詰めたゴム袋を62粒も飲み込んで、マリアはニューヨーク行きの飛行機に乗り込んだ。
17才の少女が危険を承知の上で、麻薬の粒を自らの身体に入れる。
こうした「運び屋」稼業が珍しいことではなく日常的に行われているというコロンビアの現実は、私達には理解しがたいものがあるが、彼女の生活環境を分かりやすく描くことで、その行為に至る心理に共感を持てるようになっている。
胃の中で袋が破れることは死を意味する。
その危険性を知るにはあまりにも代償が大きかったように思うも、最後はどこか「希望」を残してくれる終わり方で救いは感じる。
彼女のまっすぐな目に、ニューヨークの街はどう見えたのだろうか。
人は再生し、そしてまた再生する強さを持っているのだと、その眼差しを通して気づく事ができるでしょう。