櫻イミト

二人の人間の櫻イミトのレビュー・感想・評価

二人の人間(1945年製作の映画)
3.0
filmarksに本作の掲載リクエストしたらいつの間にか叶えて頂いた。ドライヤー監督作品はこれでコンプリート。

戦時中のドライヤー監督の作品。ナチスに占領された祖国デンマークを離れスウェーデンで制作した、出演者が2人だけのサスペンス。ドライヤー監督は本作の完成度に不満で、後に自らのフィルモグラフィーから削除した。

精神科医のルンデルと妻マリアンヌは悩んでいた。上司の教授から、ルンデルの発表した論文は自分が書いたものの盗作だと告発されたのだ。実は昔マリアンヌは教授の愛人で、騙されてルンデルの論文草稿を貸してしまっていたのだった。。。

経済的事情から必要最小限のスタッフキャストで制作したため、ほぼワンシチュエーションの会話劇だった。それでも物語は破綻なく展開し、ドライヤー監督ならではの崇高な美しいショットもかいま見える。

とは言え、ドライヤー監督の希望が通らなかったキャスティング2人の弱さと他者による最終編集は、確かに本作の完成度を低めている。ドライヤー監督の長編次作は10年後の「奇跡」(1954)、その次作がさらに10年後の遺作「ゲアトルーズ」(1964)なので、フィルモグラフィーの中では貴重な作品であるが、鑑賞優先度としては最後で良いと思われる。

※ドライヤー監督は新人の頃、本作を製作したスウェーデンのスヴェンクス・フィルム社(SF社)で「牧師の未亡人」(1920)を手掛けている。

※SF社には1943年にイングマール・ベルイマンが入社。本作の前年に初脚本「もだえ」(1944)を担当し、翌年に「危機」(1946)で監督デビューしている(当時27歳)。

ドライヤー監督1889年生
ベルイマン監督1918年生
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