みみずばれ

カラヴァッジオのみみずばれのレビュー・感想・評価

カラヴァッジオ(1986年製作の映画)
5.0
長いので要約:
他の感想がエルサレムをほぼスルーでビビる 
エルサレムとカラヴァッジオは同一人物なのでは
ラヌッチオとレナは物語進めるための狂言回し

監督は同性愛者としてカラヴァッジオに
自己投影しながら
カラヴァッジオの芸術性が
何から来ているのかを描いてる感じ

芸術家は内からの美にとにかく弱い
それを最初に教えてくれたのは、パスカローネでした…??

それぞれのキャラが一度観客に
じっと視線を向けてくるトリックもとてもいい
絶対に目があってしまう映画


以下長い感想

めちゃ耽美な映画。すごい
言葉がない空間で進む物語とか
視線で心情語るのがひたすらうまい
セリフも選び抜かれた言葉で
詩的で美しく一通り以上の意味が含まれてる

演劇めいた作りなので現代が混ざってる。
舞台は中世だけど、現代にも通じる概念を描いてる
って事だと思う。
寺山修司とかが過ぎる
スラングでいう『CAMP』な表現として
現代アイテムがよく効いてる印象
耳を澄ますとヘリの音も聞こえる

カラヴァッジオは教会に所持違法と怒られた
ナイフを持っている。
刻まれた銘文は
「no hope no fear(絶望は恐れを知らず)」
この道具は映画の様々なタイミングで現れる。
彼の芸術性の鋭さの表現かな?
同性愛的表現を絵に仕込む事への暗喩?

同性愛の罪を背負って生きる絶望
そんな中で描く絵画には怖いもんなして事?

映像の全ての瞬間が絵画みたいに荘厳だし
カラヴァッジョの絵に準じているから
大変眼福。
薄汚いガラス瓶も美しい
汚らしい歯すら的確な存在感


そして登場人物の役目がいい
人の形をした概念達

パスカローネは美の始まりで永遠の憧れ?
ラヌッチオは美と欲望?
妊娠してからのレナは物質主義?
女の人を売女扱いにする人って
妊娠した途端聖女扱いするよな〜
しかし子供ができた女は
子供のためにがめつくなるのだ
「子供は誰の子だ」「私の子」
この問答大好き。
生き物の世界は母系制なんだけど、人間社会が父系制に変わったのは資産のせいなんだよな〜。
金は事実の前にはひたすら無力。

金を介した関係性が、教会、カラヴァッジオ
ラヌッチオ、エルサレム、レナ、ダビデと
全員に描写されているのも、たまらない。
そして教皇の指輪も。パーティーも。
パスカローネだけがお金が介在しなかったね…


幼い頃に憧れたパスカローネに語りかけながら
カラヴァッジオが人生を振り返る話だけど
カラヴァッジオを囲む人の中では
エルサレムが一番いい

あまりに素晴らしいのでこの映画は
彼中心で見て欲しい

画面の端々に添えられていた
エルサレムの存在は
カラヴァッジオの本性としての
表現なんだろうか
カラヴァッジョが捨てた純真の具現化かな?
絵に直向きな心??魂の指針?
エルサレムは絵の具をずっと作ってるもんな

大人になったカラヴァッジオが
小間使いに買ったエルサレム
厳しく当たるかと思ったら
アトリエではしゃぐエルサレムに
カラヴァッジオはおどけて付き合ってくれる
大事に抱っこして頭すら撫でてくれる!
めちゃくちゃ大事にしてくれるやん…

このシーンもほぼ比喩なのかも
ダイヤより星を美しいと思うエルサレム(=カラヴァッジオ)
割り切って絵を描く大人になったカラヴァッジオは
自分の純粋性を守る為に、お金で
エルサレム(=カラヴァッジオ)を
アトリエで生かす??
エルサレムはアトリエから出ないんだよね。
カラヴァッジオが隠したダイヤはエルサレムなのかな。

だからかな、エルサレムは
カラヴァッジオにひた仕える青年に成長する
俳優はものすごい美形だけど
カラヴァッジオの好みでないのか?
(つーか自分自身だもんね)
親子のような関係のまま
そしてずっと2人は共にあり続ける

冒頭でエルサレムの説明に
『聾唖のため羊飼いになれなかったエルサレム』と言うが
=人に伝わる言葉を持てず、良き羊飼い(キリスト)になれなかった自分の事?

エルサレムが何しても
カラヴァッジオは怒らないし
カラヴァッジオが刺されても
エルサレムは怒らない
(ラヌッチオの美に常にカラヴァッジオは骨抜きで
刺された事すら悦びなので
カラヴァッジオの本心のメタファーである
エルサレムの中にもラヌッチオへの
敵意が生まれないのかな)

死の床でラヌッチオの記憶に苛まれ
うなされるカラヴァッジオを
必死に抱き止めるエルサレム
モデルにポーズを強要し怒るカラヴァッジオ
横で編み物をするエルサレムに
(本気でキレてる訳じゃないんだよ)と
ウインクするカラヴァッジオ
レナの妊娠告白に
カラヴァッジオの代わりに驚くエルサレム
レナが死んだ時画面の端で十字を切るエルサレム
添えられるエルサレムの優しさが堪らない

死の淵のカラヴァッジオに教会は十字架を強要する
教会がカラヴァッジオの同性愛を
罪と仕立てているのに
神の庇護を受けさせようとすんだよな?
しかしエルサレムは
カラヴァッジオにナイフを渡して
教会に強い視点で対峙する
ラヌッチオに敵意を向けなかったエルサレムが!

喋られないエルサレムは
嘘のない表情だけで全てを語ってくれる

カラヴァッジオがいなくなれば
エルサレムは路頭に迷うだろう

エルサレムはカラヴァッジオの死と共に
消えるに等しいのに
カラヴァッジオが求めるナイフを
与えようとする

けど死の瞬間にカラヴァッジオが頼るのは
原体験のパスカローネなんだな〜
オナニー目撃して更には触りたい欲求を生んだパスカローネ…
乾きのようにそれを求め続けて生きたんだ

カラヴァッジオが死んでから
エルサレムが見せた手話の意味が知りたいな
きっととても綺麗な思いを
カラヴァッジオに贈ったに違いない

エルサレムの見た目が
カラヴァッジオの絵に出てくる
美青年そのものに見えたので
スペンサー・レイめちゃ良かった

「私はお前に色を教えた」ってセリフに
裏の意味も読んでしまいたくなる美しさだった
(おそらく過去の自分への語り掛けなんだろうけど。最初に「エルサレムとの友情もここで終わりか」って言ってるから、友情なんだ…。まあそう言う事にしとくよ。けど蛇が絡んでたじゃないスか??しつこい?)

エルサレムは荒野の聖ヨハネ
(アトリエは荒野だと作品内で言及してる。荒野の聖ヨハネは、キリスト誕生の予言したユダヤ人。サロメの親父に殺されるアイツ)
カラヴァッジオはキリストだし
レナ(ティルダ)はマグダレナのマリア
ラヌッチオだけは実在だけど。
(実際カラヴァッジオに殺された人)
なんのメタファーか考えるのが楽しい

幼いエルサレムを抱くカラヴァッジオは
聖母子像の美しさだったし。
エルサレムは聖地の名前だから
やはりカラヴァッジオの心の擬人化かな〜?
キリストが
「ここを布教のキャンプ地とする!」って決めて
死ぬまでいた場所がエルサレムだよね

ラヌッチオとパスカローネという
人生の二大好きピを延々と思い出しながら
エルサレムの腕の中で死ぬの
監督の夢が詰まってた映画だった

新人のティルダはデビッキみたいだったので
彼女もそうなるのかな〜?と未来に期待

正直2回見た方がいい。
最初の方の寝込んでるシーン
2回目の方がエルサレムの存在感に
胸が苦しくなるから
(私はCSの録画なので2回見てこの感想に行き着いてる)

エルサレムが泣いてるのに
死んでしまってはいけないよカラヴァッジオ
エルサレムを1人にしたらダメだよ

エルサレムがとにかくいい
美しい凛々しいかわいいあどけないいたわしい
カラヴァッジオの半身だろと思いつつ
監督の好みの俳優なんだろうなぁと感じる
ヴィスコンティのヘルムート・バーガー!

マジ全部の表情がいい
賛辞がやまない

カラヴァッジオ役の人も
この人なら不意に愛されても嫌悪感感じない美形だしさ〜

プロの解説読みたい〜
ロッテントマトいくしかないのかな
映画のパンフないから画集買って
(これがエルサレムがコリコリしてた絵の具か)
って妄想したい

しかしいいもん見たわ〜
ラクリマクリスティって酒あるんだ…
みみずばれ

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