Monsieurおむすび

ヌズーフ 魂、水、人々の移動のMonsieurおむすびのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

東京国際映画祭にて。

紛争が続くシリアのダマスカス。多くの市民が廃墟と化した街を離れていく中で、家に住み続けるある一家の戦時下の日常を14歳の少女ゼイナの視点で描く。

電気も水も止まり、砲撃により壁や天井に穴が開いた家。それは長く続く戦争や家族の安全よりも体裁ばかり気にする父親による抑圧からの脱却の意味し、ゼイナの想像力も手伝って穴から覗く空が無限の、自由の象徴となる描写がユース部門らしくみずみずしい。

本映画祭で同じく紛争地帯で家の壁に穴があくモチーフを題材にした「クロンダイク」が極めて凄惨なリアル思考だったのに対して、こちらはユーモアとファンタジーを軸にし、更に女性たちをイスラム社会や家父長制の犠牲者に留めることなく、主体性を持ったパワフルな存在として表現していた点が清々しく、厳しい現実に向けた救済になっていた気がする。
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