ルイまる子

正欲のルイまる子のレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.8
ガッキーが『獣になれない私たち』で社会不適合の優等生を演じて以来、また新しいタイプの不適合者のキャラを確立したように思う。丸くて大きい黒目ががらんどうに見えてなかなか良かった。村田沙耶香の『コンビニ人間』と90年代のクローネンバーグ、ジェームススペイダー主演の名作『クラッシュ』(自動車事故に性的快感を抱く人たちを描いたマニアックな作品)を足して2で割ったような作品と解釈した。自分の真の姿や欲望を誰にも分かってもらえず、周りに合わせる日々は苦しかったことだろう。やっと本音で話せる同じ性癖の相手を見つけ、どんなにか心が楽になったことだろう。
【ネタバレあり】
でも、小児性愛者との問題を関連させるのはどうだったんだろうか。もし描くならば、小児性愛者に関しては自分の欲望を発動させれば犯罪になるのだから、それだけは絶対にダメであると、本件の趣味とは2つに分けることが大事だったのでは?また、稲垣吾郎がモラル側代表として存在していたが、上品ながらも
「xなんてありえない」と自分の規範以外を認めない発言に対し、もし自分がこっち側の立場で「ありえない」と一刀両断されたらどうしますか?と切り返すエンディングだ。この言葉はとても重いがとても日本的で感情的で問題を曖昧なままにさせ、問題を解決へと向かわせない。ガッキーはずっと何を訊かれても、言えませんの一点張りで、自分の性癖をキチンと相手に伝えずに切り返すのは、フェアじゃない。特に即物的な脳の稲垣には論理的に説明し、それが社会で受け入れられない現状を論理的に説明すれば良いだけのことだ。実際十分には分からないだろうが、すくなくとも、そういう人が居る、レベルまでには話す方がフェアだ。彼女が普通の人とコミュニケーションを取ることをとっくの昔にやめたのだろうから仕方がないにしても、だ。

マイノリティの中でも更にマイノリティ集団に対する人権をどうするか?という問題に切り込んではいるが、クローネンバーグほどには変態でなく、コンビニ人間ほどのインパクトと整合性はない。弱者側のコンプレックスは一方的に隠すだけでどうせ理解不能だろうと決めつけ、若干ひとりよがりだったと思う。
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