たけちゃん

ヒトラーのための虐殺会議のたけちゃんのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
3.5
普通の人が殺人者になる
第二次世界大戦中のドイツでユダヤ人虐殺に関わった人が、全員サディストではなく、ごく真面目な人たちが多かったというのを本で読んだことがある。
ホロコーストの実行者として有名なアイヒマンは「上からの指示にしたがっただけなのに、なにが悪いんのか?わからない」と思っていたそうだ。上司に従った、時代の流れがそうだったとか、環境的な理由で構造的に人は誰でも残虐になる可能性をひめていると思う。

この映画はアイヒマンが議事録として残していた「ヴァンゼー会議」の全貌であり、これにより1,100万ものユダヤ人絶滅政策を決定した。(*結果として600万人につながる)会議時間は90分と短く、当時のナチスのエリート高官15名で優先順位・法の解釈・混血問題・殺害方法や死体遺棄・関わるドイツ兵士たちの精神問題など想定されるあらゆる問題を提起して解決案まで理路整然としてスムーズに進められていく。これが、もしもっと建設的・道徳的なビジネス会議であるならば、あまりに見事である。ただ、そうではない。
静寂とは無音ではなく、音があって初めて静寂だと言われるが、床がきしむ音など生活音しかない中、道徳的な疑いは一切なく論理的に話が進むあたりは、かなり不気味である。音楽も一切ない。

■参照本 増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊