あまのうずめ

METライブビューイング2022-23 ケルビーニ「メデア」のあまのうずめのレビュー・感想・評価

3.7
明日結婚式を迎えるコリント国の王女グラウチェは婚約者ジャゾーネの前妻コルキスの王女メデアが現れるのではという不吉な疑いでいっぱいだ。ジャゾーネはコルキスの地で(メデアと一緒に)金羊毛を奪い取り、戦利品としてクレオンテに渡していた。クレオンテはメデア(とジャゾーネ)の子供たちを人質として取っているので安心だと娘をなだめる。そしてメデアが王宮に現れると......。


▶︎1797年ケルビーニ作のオペラでマリア・カラスの当たり役としては知られるものの、メデアを歌える人がいなかったのでMETでの舞台化はなかった。今回ソンドラ・ラドヴァノフスキーが手を挙げたことでMET初演となったそう。

歌唱だけでなく演技力も当然求められ、ほぼ全幕出ずっぱりの上、ほぼ半分は地を這っていたのではないかという位体力も必要なメデア役をS・ラドヴァノフスキーが情感たっぷりに体現していた。確かにソリストとしての力量が問われる役で、初演だったのも頷ける。

ステージに大きな鏡を斜めに設置したことで王宮での結婚式を見事に演出し、追い出された王宮の城壁との対比がメデアの孤立と怒りを表すのに効果的だった。

ジャゾーネ役にマシュー・ポレンザーニ、王女グラウチェ役にジョナイ・ブルーガー、王クレオンテ役にミケーレ・ペルトゥージ、メデアの侍女ネリス役のエカテリーナ・グバノヴァ、演出はお馴染みのデイヴィッド・マクヴィガー、指揮はカルロ・リッツィが担当。
幕間のインタビューにデイヴィッド・マクヴィガーが出演し、カーテン・コールにも応えていたのは初めてだった。

普段ジャズばかり聴きオペラは専らメトロポリタン・オペラの視聴のみだが、今回古典派とロマン派の過渡期の埋もれた名作を味わえる貴重な経験をすることが出来た。

カーテン・コールの吹き荒れたチケットに高揚する演者たちをみて、思わず涙ぐんでしまうワタクシだった。