滝和也

日本侠客伝 浪花篇の滝和也のレビュー・感想・評価

日本侠客伝 浪花篇(1965年製作の映画)
3.6
浪花に咲く男華

どす黒い陰謀渦巻く
大阪港に横浜から
一人の男がやってくる。
そしてまた一人、
塀の向こうから男が
帰る時、義に咲く華が
舞い落ちる…。

「日本侠客伝 浪花編」

大ヒットした前作を受けて、大阪に舞台を移し描かれた日本侠客伝シリーズ第二弾。前作との繋がりは無いものの、その我慢劇としてのスタイルは変わらず、人気が上がった高倉健と大物俳優の共演、マキノ雅弘監督が男の世界を描きます。

横浜から弟の遺骨を預かりに藤川は大阪港へやってきたが、既に港の仲士寅松達により墓に収められていた。寅松が言うには、松島新地を牛耳る新座組が昔ながらの半田組の港の利権を狙い酷い振舞をしていると言う。藤川の弟の死も関連しているらしいと。港の港湾労働者である仲士達に恩を感じた藤川は一緒に働き始めるが…。

基本的なスタイルは前作と同じながら、主人公藤川、高倉健が流れ者として登場し、(前作は共演萬屋錦之介が流れ者)大阪の組同士の争いが描かれます。

その前半の大物ゲストに村田英雄。健さんに惚れて仲間にする半田組の親方小田島を演じ、前作の萬屋錦之介の役回りを担います。途中新座組に邪魔されながらも仕事をやり抜くシークエンスがありますが、この辺りも前作と同じです。ただ…演技は今ひとつかなと。でも歌は流石、更にその最後はマキノ演出の見事さにより圧巻。村田の歌に被せ、光と影に彩られ、汽笛とのカットバックも鮮やかです。

また村田の後を受け、登場する冬村役に鶴田浩二。ここからは一気に話が走り出すのですが、鶴田浩二にライトが当たり過ぎてやや健さんが影に…。鶴田のポジションが健さんよりこの時代遥かに上なのがわかります。健さんが鶴田浩二さんに同道する感じになりますからね。

正にそれは後の昭和残侠伝のスタイルなのですが、まだまだ確立していなくて、残侠伝を先に見てしまったので、地味に見えてしまいます。ラストの二人は渋くて最高なんですけどね。

前作と同じポジションなのは寅松役の長門裕之。女絡みの軽妙洒脱なキャラは当り役。今回は相手役に八千草薫様。儚げで可憐。今作のヒロインでは№1ですね。南田洋子さんもいますが、こちらは鶴田浩二さんの相手役。どうしても任侠モノではヒロインは悲しげです…。因みに美人度では五月みどりさんもいてかなり高い…カマキリ夫人になる10年前なので若い(笑)

健さんは前作から変わらぬ、無口で気っ風の良い兄貴分。ハマり役です。ただやはり後半の鶴田浩二さんには押され気味です。任侠モノではあるものの、浪花人情モノである部分が多く、喜劇的なそこではやや居心地が悪そうですし…。

前作の方がまとまっている感があり、やや下げてますが、男の世界が描かれた佳作です。健さんファンなら見ておきたいですね。
滝和也

滝和也