miwan

パリタクシーのmiwanのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
4.2
時間とは「長さ」ではなくて「質量」だと、つくづく感じた。

「昨日素敵な兵隊さんとダンスをしたと思ったら、翌日には老人ホームへ行くの」。マドレーヌの言葉は、普段わたしたちも感じている年月の流れる早さを物語っている。でも、そこには大きくて重い出来事がぎゅっと詰まっている。

「私の時代は今よりずっと大変だった」とか「今の人たちは」みたいな、よく耳にする自分中心の愚痴や恨み言は決して言わない。ただ、思い出を淡々と語る。それは瑞々しい映像や、美しいメロディーとなって語られる。

5年間一緒に過ごしても通じ合わないこともあるし、ほんの数時間一緒に過ごしただけで深く感じ合うこともできる。

普段、わたしはどんな映画を観ても泣くことはほとんどない。直情的に涙を流すより前に、いろいろ考えてしまって五臓六腑が苦しくなってしまうのが常だ。
けれど本作は、自然と眼が熱くじんわりとなった。
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