NORA

少女は卒業しないのNORAのレビュー・感想・評価

少女は卒業しない(2023年製作の映画)
4.9
閉校間際の地方公立高校の、最後の卒業式までの2日間を描いた群像劇。閉校といっても別に過疎学級ではなく、おそらく行政の都合(合併)による閉校なので、悲壮感や濃厚な人間関係があるわけでもなく、大した事件らしい事件も起きない(中盤、ちょっとしたどんでん返しはある)のだが、見事な脚本、若き役者たちの素晴らしい演技合戦により、まったく退屈しない2時間に仕上がっている。演出手法は『桐島、部活やめるってよ』ほど周到とはいえないものの、台詞の間、人間の呼吸、窓から見える風景、周囲から聞こえてくるクラスメイトの喧騒など、卒業式直前の学校という空間が見せるひとつひとつの瞬間をきわめて丁寧に切り取っており、作り手がこの物語を本当に大切に扱っていることが伝わってくる。
4人の少女を主軸として物語は進行していくが、それぞれがそれぞれの葛藤、わだかまりを乗り越え、青春を「卒業」していく展開は非常にエモーショナルで、観終えたあとには爽やかな感動が残る(特に、「もっと早く話せば良かったね」には泣いてしまった)。俳優陣はみな巧みな演技を見せるが、とりわけバスケ部女子コンビの自然なやりとりは本当に素晴らしかった。かつて「高校生」としてあの校舎に存在していた、大人になった今もなお、あの場にまだ拭い得ぬ何かを残してきたすべての人々に薦めたい傑作。2023年ベスト。
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