自堕落な生活を送るアウトローな探偵・連城新次郎は知り合いのヤクザから組関連施設への放火事件の調査を依頼される。
中国系マフィア“バレット”への捜査を進める新次郎だったが、時を同じくして行方不明になっている在日クルド人女性の捜索を依頼される…というお話し。
昔ながらのハードボイルド作品だけれど、今の世の中をしっかりと捉えながら日本の陰の部分を浮き彫りにする社会派作品でした。
例えば不揃いな石を順番に敷き詰めようとした時、無理矢理に押し込めていってしまうと徐々に石は上手くハマらなくなってゆき最終的にはどこにもはめる事の出来なくなった石たちがそこからこぼれ落ちてしまいます。
そうして余った石は人目につかないどこかに捨てられ、出来上がったのは歪に舗装された庭。
日本は安全で治安のよい国だと言われます。
そしてそれは事実でもあります。
だけれどその“安全”の陰にあるものを僕たちは見ていない、もしくは見ないようにしているのかもしれません。
昔は日本にも沢山いた野良犬たちが今はいなくなり町が安全なのは、沢山の野良犬たちが殺され排除されたからに他なりません。
そんな風に日本の今の安全はこぼれ落ちたモノたちを排除した、犠牲の上に成り立っている歪な庭なのかもしれません。
本作の登場人物たちは世間からこぼれ落ち排除された先で流浪の民として自分の居場所を探していたり、仮初の居場所を守ろうと藻掻き闘っています。
自分を守る為に選んだ暴力という手段。
だけれどそんな彼らの拳はまるで相手と手を繋ごうと必死に差し伸べ合っている不器用な握手の様にも見えました。
世の中のキレイな所だけ見て、キタナイものを排斥する事がかえって世の中を歪め壊しているという事に気づかなければきっと世界に安寧の時代は訪れないのだと思います。