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アテナのkuuのレビュー・感想・評価

アテナ(2022年製作の映画)
4.0
『アテナ』
原題 Athena.
製作年 2022年上映時間 97分。
: [Netflix作品]
『ワールド・イズ・ユアーズ』などのロマン・ガヴラスが監督を務め、ある少年の死をきっかけに勃発する暴動を描いた悲しきフランス産クライムドラマ。
出演は『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』などのダリ・ベンサーラ、サミ・スリマン、『テディ』などのアントニー・バジョンのほか、オウアシニ・エンバレク、アレクシ・マナンティら。

ひとりの少年が殺害された悲しい事件をきっかけに、激しい戦いの舞台と化したアテナ団地。
その争いの渦中には、被害者である少年の兄たちがいた。
弟を亡くした2人の兄が、混乱に巻き込まれていく。

※老婆心ながら注意すべきは、物語がかなり暴力的です。
リアルな暴動シーンがあることを覚悟しておいて視聴ください。
ただ、血はあまり出てきません。

今作品の冒頭、アルジェリア系の男が警察署で、13歳の弟が警察の暴虐行為によって死亡し、警察が犯人を捜査中であることを告げる。
男は冷静さを求める。
しかし、いつの間にか誰かが警察署にモロトフ・カクテル(火炎瓶)を投げ込み、警察署の略奪が始まる。。。
この時点で、映画が始まって10分も経ってなかったと思います。
今作品はエッジの効いたミュージックビデオを作ることで知られるフランス人監督ロマン・ガブラスの最新作で、警察の横暴を受けた郊外(パリのバンリューで撮影だそうです)の反乱というフィクションを描いています。
勿論、フィクションですが、個人的にはあまりにも悲劇やったし、今でも心に何かしら引き摺っています。
約10分に及ぶオープニング・シーンは激しく、しかも1テイクで撮られている。
実際、今作品では長回しが繰り返されている(正直、これらのショットのいくつかがどのようにして可能なのかさえ分かりません)。
緊張感は最初から伝わってきて、本当に止まらないし、止める言葉さえ見つからない。
特に、フランス系アルジェリア人俳優ダリ・ベンサラ演じる主人公アブデルがいい味を出していました。
個人的にアルジェリアは感慨深い地(出生地)ですので、親近感さえ感じてます。
この復讐劇は最初から最後まで心を掴まれましたが、暴力が苦手な人は、近づかないほうがいいかとは思う作品です。
先日、New York Timesに掲載された"Oh Brothers, Where Art Thou?"から始まる好意的な記事を見た後チェックしようと思い鑑賞。
今作品のようなテーマに、
1995年には映画『憎しみ』があり、
1997 年には『MA 6 T VA CRAQUER/俺がシテやられる』(友達に借りたままなので近いうち見てみます)があり、
そして、偉大なロマン主義の詩人、小説家ビクトル・ユゴー作品の映画でも何度も実写化されてます『LES MISERABLES』がある。
この『ゲットーの反乱』のサイクルを満たすために、最も印象的で巧みな映画が、たった数回テイクで作られたのは驚く。
残忍で感動的、しかし陳腐では決してなかったし、いろんな意味で衝撃的で、それが目的だろうとは思います。
Netflixが配給会社として監督とプロデューサーに完全な自由を与えたことは驚きではないかな。大手映画関係者や配給会社は、このようなテーマ、社会的なテーマでは暴動のリスクが大きすぎるから、欧州じゃやりにくいやろし。
今作品はスリラーではなく、社会派映画だしまた良かった。
ただ、今作品の警官のキャラは、ゲットーのチンピラ顔の俳優なんは少し残念。
今作品ではそれも意図的なんかと思えるほど、善人も悪人も登場しない(主人公アブデルは唯一の善人やけど、紙一重。これが人間の性なんかな)。
事実に基づいた『メッセージ』(事実なのは伝えたいことだと思いますが、このような事件はありませんので)に感心しました。
元兵士のアブデルのキャラは、全キャストの中で個人的にはピカイチ。
彼の性格の変化は、最も驚くべき俳優テクと云えるほど巧みでした。
セバスチャンもそうです。
この男はしゃべらない、ほとんどセリフすらありませんが、彼は自閉症者特有の行動がみられるが、その後、◯◯◯の専門家然として登場することで、彼の過去も垣間見れる(あくまでも推測の域をでませんが)。
今作品は、爆発的で挑発的。
また創造的でいて論争的な映画の巧みな要素を提示してましたし、リアリティーある撮影と巧みなカメラアングルで描かれており、映画の生の側面は個人的には嵌まりました。 
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