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SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのkuuのレビュー・感想・評価

3.7
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
原題 She Said.
映倫区分 G
製作年 2022年。上映時間 129分。
映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性的暴行を告発した2人の女性記者による回顧録を基に映画化した社会派ドラマ。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』のキャリー・マリガンと『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』のゾーイ・カザンが2人の主人公を演じる。
『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』のマリア・シュラーダーが監督を務め、ブラッド・ピットが製作総指揮を手がけた。
原作は、ジョディ・カンターとメーガン・トゥヘイの2019年の同名書籍。
2018年4月、本作品の製作会社であるアンナプルナとプランBが提携し、書籍の出版前から物語の権利を取得したそうっす。

ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、大物映画プロデューサーのワインスタインが数十年にわたって続けてきた性的暴行について取材を始めるが、ワインスタインがこれまで何度も記事をもみ消してきたことを知る。
被害女性の多くは示談に応じており、証言すれば訴えられるという恐怖や当時のトラウマによって声を上げられずにいた。
問題の本質が業界の隠蔽体質にあると気づいた記者たちは、取材対象から拒否され、ワインスタイン側からの妨害を受けながらも、真実を追い求めて奔走する。

マリア・シュラーダー監督の『She Said』は、ハーヴェイ・ワインスタインの職場での女性に対する虐待や性犯罪を暴いたニューヨーク・タイムズの調査をもとにした実話(フィクション部分も十分あり)でした。
今作品は何十年も前の性差別を描いているが、今回はセレブリティの現代的な物語でもあるかな。
堅物的な見方に書くと、この物語はフェミニスト的な物語なので、もっと大きく羽ばたく余地があったんちゃうか、どこかで映画的な荘厳さが欠けていると個人的に感じた。
ウォーターゲート事件の真相を突き止め、ニクソン大統領を失脚にまで到らしめた二人の新聞記者カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの活躍を描いた実話の映画『大統領の陰謀』(1976年)や『スポットライト』(2015年)のようなもっと巧みな作品をすでに見てるかも知れへんが、ジャーナリズムという切り口全体が時代遅れで退屈に見えた。
今作品には、誠実さ、献身、悪と戦い、犯罪に対して声を上げる、などといったポジティブな資質がすべて備わっていたわけやけど、そこに何か新しいものがあるんかと思わずにはいれない。
ワインスタインについてはアチコチで十分に見知てったので、映画そのものよりもフィクションや映画的な自由を楽しむのでなければ、この映画が何か違った重要なものを提供できるんは難しいかな。
製作者たちは、これが現代の『大統領の陰謀』(1976年)になることを望んでいるように感じられるが、『スポットライト』(2015年)との共通点のほうが多いかな。
今作品が苦労しているのは、この事件に関心のある人はこのストーリーを知っているので、ハッとする瞬間がなく、最高の部分は被害者を演じる人たちのインタビューである。
そして単にその瞬間が十分でないことだ。
その代わり、調査に向かう記者、報告の準備をする記者、メモを取る記者がたくさん出てきますが、物語の本当の核心は我々に伝わらず、ジョディ・カンターとメーガン・トゥヘイの実生活への影響を考えると、今作品は十分に強いのだろうかという疑問が残る。
ワインスタインの顔を見せず、女性たちに焦点を当てたシュラーダー監督に敬意を表すかな。
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