ぶみ

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのぶみのレビュー・感想・評価

4.0
問題はワインスタイン以上に、性加害者を守る法のシステムにある。

ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイーが上梓したノンフィクション『その名を暴け ―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』を、マリア・シュラーダー監督、キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン主演により映像化したドラマ。
#MeToo運動が広がるきっかけのひとつとなった、ニューヨーク・タイムズ紙による性暴力報道の裏側で、真実を暴くべく奔走する記者等の姿を描く。
巨大な権力に挑む二人の記者、カンターとトゥーイーをカザンとマリガンが演じているほか、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー等が登場。
物語は、2017年10月、名うての映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが数十年にわたって行ってきた性暴力や虐待の実態を報道するため、様々な逆境をはねのけていく様が描かれるが、まだ最近の事件であるとともに、#MeToo運動に発展していったことも記憶に新しいところ。
そのため、物語の結末はわかっていることから、いかにワインスタインを追い詰めていくかに焦点が当てられることとなるが、執拗な妨害にあうのに加え、瞬時に判断が求められる交渉術であったり、他誌を出し抜こうとするタイムリミットであったりと、新聞記者もの特有の要素が盛り込まれており、非常にサスペンスフル。
また、実際に被害者であったアシュレイ・ジャッドやグウィネス・パルトロウが本人役として出演しているため、リアリティも申し分なく、まるでドキュメンタリーを観ているかのようである反面、映画的なエンタメ度は低め。
一つ気になったのは邦題のサブタイトルで、記憶に新しい事件なだけに、その名は暴かれているとともに、そこが本質ではなく、実名を公表した被害者の勇気を讃えるのならば、単純に邦題も『シー・セッド』のみで良かったのではなかろうか。
記者の仕事ぶりと、報道の裏側が丁寧に描かれており、一つの記事が世界を変える力を持っていることをあらためて実感すると同時に、多くの男性に観てもらいたい良作。

あの日、私は彼に声を奪われた。
ぶみ

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