ぶみ

そばかすのぶみのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
4.0
今までを全部抱きしめて。
進め、自分。

玉田真也監督、アサダアツシ企画、原作、脚本、三浦透子主演によるドラマで、メ〜テレと制作会社ダブがタッグを組んだプロジェクト、(not)HEROINE moviesの、加藤拓也監督『わたし達はおとな』、安川有果監督『よだかの片思い』に続くシリーズ第三弾。
恋愛感情が湧かない主人公、蘇畑佳純(そばたかすみ)の姿を描く。
シリーズ前田二作は鑑賞済み。
主人公となる蘇畑を三浦、中学時代の同級生を前田敦子、前原滉、知り合った男性を伊島空、妹を伊藤万理華、祖母を田島玲子、父を三宅弘城、母を坂井真紀が演じているほか、友情出演で北村匠海が登場。
物語は、チェリストになる夢を諦め、実家に戻り、コールセンターで働く30歳の主人公、蘇畑の日常が描かれるが、戻った実家は、妹が妊娠中でその夫は浮気疑惑、父は鬱で休職中、祖母はバツ3、母は何気に結婚しないことを責め、お見合いを勝手にセッティングと、家の台所や、舞い戻った部屋の雰囲気を含め、何とも言えない実家感が半端ない。
何より、蘇畑に言い寄ってくる男性や、結婚に対するプレッシャーを与えてくる家族等に対し、自分がどういう人間なのかを説明しようと奮闘かつ葛藤する三浦の演技は自然体であり絶品。
また、蘇畑を始め、押し付けがましくなく、多種多様な価値観を描いているのも、悪くない。
加えて、基本的に長回しのシーンが多く、先日観た『わたしのお母さん』が静の長回しならば、本作品は動の長回しといった印象であり、ついつい繰り広げられる会話劇に入り込んでしまうし、時折挿入されるコメディテイストも、絶妙なスパイスとなっている。
そして、結婚に対するプレッシャーと言えば、性別は違えど、私も20代後半あたりから、良い人はいないのか、といったプレッシャーを、家族を含め、周りからさりげなく受けてきたのを思い出した次第。
等身大で生きようとする主人公を、三浦が見事に演じているとともに、あるあると思う部分が多く、社会派的なメッセージと、映画としてのエンタメ性が、絶妙なバランスでミックスされており、2022年ラストを締め括るに相応しく、後味の良い秀作。

価値観おかしいよね、シンデレラって。

※さて、今年の映画鑑賞及び投稿は、本作品で最後です。
振り返ってカウントしたところ、今年は327本鑑賞、うち劇場鑑賞が152本でした。
皆様が、良い作品に出会えることを願いつつ、来年もよろしくお願いします!
ぶみ

ぶみ