NAOKI

夜、鳥たちが啼くのNAOKIのレビュー・感想・評価

夜、鳥たちが啼く(2022年製作の映画)
3.8
原作者がずっとチラつくって話(笑)

「海炭市叙景」
「そこのみにて光輝く」
「オーバーフェンス」
「きみの鳥はうたえる」
「草の響き」

これらの映画の共通点、わかりますか?
監督は全部違います。
原作が全て佐藤泰志だということ、おれは全部観ているのですがどの作品も例外なく深く心に焼き付いています。

佐藤泰志は30年前、遺作となった「虹」の原稿を編集者に渡した後、畑で首を吊って自殺してしまいました…享年41歳…

死後、自分の作品がこれだけ映画化されているのをどんな気持ちで空から見てるのかな?

そんな佐藤泰志原作の本作「夜、鳥たちが啼く」

売れない作家の家に子連れの女性が引っ越して来るところからこの映画は始まります。

彼は母屋をこの母子に空け渡し自分はプレハブの離れに住むこととなるのですが…

その女性が自分の先輩の妻で離婚して行く場所が見つからずこの家に来たこと、彼は恋人と住むためにこの家を借りたのに彼女が出て行って一人になってしまってること、こういうことが断片的に挟み込まれる回想で次第にわかってきます。

自分の家に子連れの美しい女性が居候する…なんてもう昭和の日活ロマンポルノの鉄板の設定(笑)なるようになるのをじっくり腰を据えて見せていく。元々エッチ系の映画からやってきた城定監督…その信頼感たるや間違いないです(笑)

彼女は脈なさそうにみえて夜な夜な小学生の息子を寝かせた後、夜の街に出掛けて行きずりの男と遊んでいる様子…こりゃたまりませんね…息子とは必要以上に仲良くなるし…

しかし主人公の慎一は創作に苦しむ作家…どうしても自殺した原作者佐藤泰志とオーバーラップしてしょうがない。
「自分のことを書く」というフレーズが何度も出てくるしね…

なんとかなっても絶対上手くいかないよな?と思ってしまいます。

これは愛なのか発情なのか?
近所で飼われてる雉みたいな鳥が発情期で夜にギーギーと啼く…
慎一もこの鳥と同じだぜって感じで…

「だるまさんころんだ」のさわりは邦画のダサさが出てしまってるみたいでいただけなかったな…ちょっと観てて恥ずかしくなる感じ…邦画にありがち…

ところがこの映画突き放すように終わるのだが城定監督はわざわざ時系列を入れ替えてまであるシーンをラストシーンに持ってきている。

どうせうまくいかないと思ってるでしょ?だけどさぁ少なくともこの時だけは美しいのよ…刹那的なものかもしれないけどこの時だけは彼らは幸せなのよ…まるでそう言ってるかのような城定監督の「優しい」ラストシーン…

悲劇を予感していたおれはハッとして静かに感動しました。

いつの間にか鳥の声も聞こえなくなってたじゃないか…

おれはなんか深く納得して僅か3人で観ていたレイトショーを後にしたのでした。(笑)
NAOKI

NAOKI