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カラオケ行こ!のolnのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
2.5
【愛は与えるもの、鮭の皮のように】
ジャンル:バックレメガネ戦記

歌唱の上手い下手を超え、声に個人の感情が宿ることでバイブス爆発が起こり、決して美しいとは言えない歌声に心が震えることがあります。本作は鑑賞者に対し、このバイブス爆発の観測体験を提供する目的で制作されたのだと思いますが、端的に言って失敗している印象です。
以降、個人的にダメだったポイントを記述しますので、本作を愛している方は読み飛ばしていただくが吉と存じます。




まずは本職を全うできていない半端な人間が何をしたところで、どうとも思いません。そこに信念を感じなければ尚更のこと。それこそ当人が毛嫌いしていた半端者に自ら迎合しているわけですから、筋が通っていないポンコツに成り下がった瞬間を観測させられただけの鑑賞体験でした。
この顛末にするならば、歌詞に重ねてフラッシュバックするシーンを組込むとか、場所の妙を利用できるセッティングにするとか、仲間を引き連れるとか、アイディアを捻れば幾らでも良くなるであろう工夫さえ怠っており、邦画の浅はかな部分が濃縮還元された工場生産型映画と形容する他ない出来栄えかつ、それが持て囃されている事実に悲しい気持ちになりました。
そもそも、初期状態の綾野剛が然程音痴なわけではないうえに、1人以上の綾野剛以下が存在している時点で、どうなったところで結末に不協和音が生じてしまいます。あまつさえ、主人公が歌唱するシーンや、上手く音程を取れないシーンが一切描かれないまま時間が過ぎ、主人公が何に苦悩しているのかを他者のセリフで知らせるという最悪の脚本に、今回ばかりは大して邦画を観ない人たちが、「これだから邦画は・・・」とか言う気持ちに共感しました。

極め付けは、舞台装置として機能しそうなオイシイポジションにいる和田が、ただの因縁垂れ共感力皆無小僧に終わったことが最悪でした。こいつが主人公周辺の環境変数をいじり倒して、物語を面白くする役割だろうと期待していたのに、クソの役にも立ちません。何のために存在しているのかさえ不明なのに、何故か主要キャラのような描かれ方をした哀れなキャラクターに不憫ささえ感じます。
あげつらえばキリがないほど会話中に出てきた設定が次々に消失し、余計なものばかりを写し、垂れ流すので、私の中の遺留品BOXはパンパンです。
得られたものは、出来の悪い長いコントを鑑賞したような新春小笑いです。以上。
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