くりふ

世紀の女王のくりふのレビュー・感想・評価

世紀の女王(1944年製作の映画)
3.0
【水浴美女で戦争を忘れる】

アマプラプールから湧いてきたので、久しぶりに。暑気払いできるかなーと。

むかし、クラシック・ミュージカルを追いかけていた時、バスビー・バークレー製、狂気の爆笑プール・スペクタクルが展開する『百万弗の人魚』と出会い、エスター・ウィリアムズ主演の水中レビュー映画をいくつか、知ったのでした。

本作はエスターさんの、水中レビューデビュー作ですね。初めてプールサイドに立つ姿は本当に輝いており、邦題の女王に相応しい。世紀の方は、意味わからんけど。

元々は主演レッド・スケルトンを売る映画だったらしい。が、仕上がったらあまりにエスターさんが見事なので、タイトルも『Bathing Beauty』に変えたそうな。彼女は元水泳選手ですが、陸に上がっても美女でいやー、脱がなくてもすごいんです。

当初の狙いは水着メインじゃなかったのでしょう。レッドは当時、人気のあったコメディアンらしいですが、いま見ると見事につまらない。全体では彼が、映画の足を引っ張っているようにも見えます。ドリフ的ギャグのバレエコントだけ、見事な仕上がりでしたが。

他は、トランペッターやらラテンなバリトン歌手やら、当時人気だったと思われるエンタテイナーが次々登場して一芸を披露し、お祭り気分を数珠つなぎしていきます。超絶テクの美熟女オルガン弾きなんてのも登場して、呆気にとられます。すんごいわ!こんなの初めて。

…と、つまらぬ物語はそっちのけで、紅白歌合戦みたいになっていくのを見て、ハタと気づくのでした。あ、これって1944年作だ。要は、兵隊さん向け慰問映画じゃないかと。

初見ではそこに気づけず、ただつまらんなーで終わってしまったのですが、不覚でした。

冒頭の美女ワンサカのプール、締めの水中レビュー。ひたすら陽の快楽に徹したショーは、戦場で疲れたアメリカ兵に一番、見せたかったわけだ。…もちろん、レッドのコントもね。

そう捉えれば、こういう映画として大アリなんだなーと。思い切り納得してしまった。

当時こんな映画、多かったのでは?人気のピンナップガールだったベティ・グレイブルの、まんま『ピンナップ・ガール』とか。アチラは最後、軍服姿のベティが戦え!と歌う行軍ミュージカルと化し、慰問から戦意高揚に化けてましたが。同じ1944年作。恐かった…。

ところでエスターさんは、冒頭のソロ演技の方が輝いていますね。集団での水中レビューは、まだ演出側も慣れていなかったのか、『百万弗の人魚』などと比べるとショボイです。

すこし前、コーエン兄弟が『ヘイル・シーザー』でこの水中レビューを再現していましたが、CG使っちゃったもんで台無しにしていましたね。この演し物は人海戦術いうか、人プール戦術で攻めないと、意味ないと思います。

しかしなー、インド映画で水中レビューをやったら、スゴイのできそうな気もするなあ。

今年も終戦記念日が近づいてきましたが、こんな映画でWWⅡをリメンバーさせられるとは、不意を突かれはしたのでした。

<2022.8.11記>
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