櫻イミト

夜の儀式の櫻イミトのレビュー・感想・評価

夜の儀式(1969年製作の映画)
4.0
ベルイマン監督初のテレビ用作品。好評を博したので35mmフィルムにブローアップし劇場上映された幻の一本。タイトルの付いた10 のシーンで構成され、ベルイマン映画常連の役者4 人が演ずる会話サスペンス。ベルイマン自身も司祭役で出演し「第七の封印」(1956)をオマージュしている。

北欧のある町で「儀式」という名の前衛仮面劇を巡業中の三人組の一座が、その内容をワイセツ罪で起訴され、予審判事の事情聴取を受けていた。その証言と彼ら同士のホテルでの会話から、表現者たちの非社会的な生き様と価値観が明らかになっていく。そして、あくまで社会的規範の尺度で彼らを計ろうとする判事の前で、実地検証として「儀式」を実演することになるのだが。。。

テレビ用の低予算の会話劇だが、その内容は実に興味深かった。三人組はベルイマン自身の内面を3つに分けた分身とのこと。三人それぞれに性格に破綻があり社会的モラルの欠如を判事から追及されるのだが、一方で判事の凡人ぶりも浮き上がってくる構図となっている。最終パートは、三人による圧倒的な表現(芸術)を前に、判事がエクスタシーに堕ちていくように見えた。

本作のテレビ放送に際しベルイマンは視聴者に、テレビの電源を切り代わりに映画に行くように促したとのこと。本作は大衆的価値観や社会的規範への、芸術家ベルイマンからの挑発 のように思える。

※ベルイマン監督が設立したプロダクション、シネマトグラフ社の第一弾
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