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千夜、一夜のmuraのレビュー・感想・評価

千夜、一夜(2022年製作の映画)
4.3
タイトルが秀逸。最後になるほどと感服。内容にもノレた。

新潟、佐渡島。水産会社で働きながら暮らすトミコ。夫は30年前に行方不明となり、それからはひとり暮らし。北朝鮮による拉致を疑いつつも、夫の失踪の理由がつかめないでいる。あるとき同様に行方不明となった夫を探すナミが訪ねてくる。トミコはナミに協力し、ナミの夫を探すことを始めるが、このことがトミコの日常に変化を与える…

北朝鮮による拉致の問題について、こういった切り口で迫るんだ、なかなか斬新だな…なんて思いながら見始めたが、この物語の描くところはまったく違うものだった。

夫がいなくなった理由を自問自答する日々。その年月が果たして良いものだったのか悪いものだったたのか…。おそらく誰にも答えが出せないようなことに迫っていく。考えさせられ、なかなかよくできた話だと思った。

(以後ネタバレあり)
「夢の中にいる」といわれるトミコ。常に気丈にふるまっているように見えたが、最後は深夜に寝言のように夫への問いかけをくり返す弱い姿を見せる。夫のことを忘れていきそうな自分へ抵抗してのことであろう。このシークエンスに心をつかまれた。グッときた。いい映画だと思った。
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