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ホーホヴァルト村のマリオのすずやのレビュー・感想・評価

ホーホヴァルト村のマリオ(2020年製作の映画)
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EUフィルムデーズのオンライン配信にて鑑賞。
今回のEUフィルムデーズで(中身よく知らなかったにもかかわらず)一番楽しみだった作品の一つだったけれど、その期待を裏切らない面白さだった。
大好きな親友のレンツを追いかけて、その恋心を信じて一緒に訪れたゲイバーで、イスラム過激派によるヘイトクライムに巻き込まれ、親友は亡くなったにもかかわらずたまたま無傷で生還してしまった主人公のマリオ。「どうしてあんたが生き残ったの」「レンツが生きてた方がよかった」「生き残って幸運だったね」そんな様々な声をかけられて、”目の前で心から大好きだったレンツを失った”ことに誰も気づいてくれない。その痛みに誰も寄り添ってくれないままで、次第に「ぼくは生き残ってしまった」「僕に情けは要らない」と人を遠ざけるまでに至っていく。そして次第に”神の愛”に救いを信じるイスラム教徒に接近していく…という筋書き。

元からはみ出し者だったマリオが村八分されていく様子があまりにすさまじくて、「もうとっととこんな村捨てなよ…」という気持ちでしかなかった。英題の”Why not you"ってそういうことだったのね…
彼の、のびやかに心の内を表現できるダンスは、村の人々には「異常」と言われ、イスラムの仲間たちには「(神の愛の)代替品にすぎない」と言われ。どうしてこんなにも世界はマリオに優しくない?と思ってしまった。思えば、マリオのダンスを信じ、心から愛してくれたのはレンツだけだったのかなあ…もしマリオがもっと、自分のクィアな部分に向き合う勇気があって、村の保守的な考えから離れられたなら、その愛に素直で真っすぐになれたかもしれないのに…と考えずにいられない。

ところで主役の男の子、今度レインボーリールでかかる「大いなる自由(Great Freedom)」にも出てるらしいですね?!楽しみが増したな…
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