ぶみ

1秒先の彼のぶみのレビュー・感想・評価

1秒先の彼(2023年製作の映画)
3.0
ありのままの自分を愛したい、あなたの物語。

山下敦弘監督、宮藤官九郎脚本、岡田将生、清原果耶主演によるドラマで、2020年の台湾製作、チェン・ユーシュン監督『1秒先の彼女』(英題:My Missing Valentine)のリメイク。
何をするにも1秒早い郵便局で働くハジメと、1秒遅い大学生のレイカ等の姿を追う。
オリジナルは公開当時鑑賞済み。
主人公となるハジメを岡田、レイカを清原が演じているほか、荒川良々、羽野晶紀、加藤雅也、福室莉音、片山友希、しみけん等が登場。
そんな中、先日観た是枝裕和監督『怪物』で、主人公となる少年の一人を演じた柊木陽太がハジメの少年時代として登場しているのと、残念ながら本作品が遺作となってしまった笑福亭笑瓶が、ラジオDJと写真屋の店主として元気な姿を見せていたのは見逃せないポイント。
物語は、前半がワンテンポ遅いハジメ視点で進行し、コメディ色強め、後半はワンテンポ遅いレイカ視点により、前半と同じ光景が描かれるという構成は、オリジナル版と同じ。
オリジナルを観ているだけに、どうしても比較をしてしまうのだが、やはり一番の違いは、主人公の男女設定を入れ替えていること。
オリジナルにおける女性主人公であるシャオチーのやり過ぎな部分が、入れ替えることで薄められているため、思いのほか違和感なし。
また、オリジナルで印象的だった台湾の美しい街並みや海辺がどうなるのかと思っていたところ、舞台を京都へと移し、鍵を握る場所を天橋立としていたのはジャパンオリジナルとして悪くないが、スクリーンで比べてしまうと台湾の美しさには勝てないか。
ただ、構成は前述のようにオリジナルをトレースしているものの、全体的には説明不足かつ冗長になってしまった感は否めない。
クルマで言うと、一昔前は二年ごとにマイナーチェンジが行われ、目新しさを出すために、デザインの良し悪しにかかわらず、その都度細部を変更していたことがあり、変更のための変更となり、本末転倒となっていた事例が多々あったが、本作品も、同様で、ジャパンオリジナルの雰囲気を出したいが故に、無理やり設定変更している印象であり、必然性があまり感じられなかったのは残念なところ。
そう感じたのは、オリジナルを知っているが故のことであるため、オリジナルを知らずに観れば気にならないのかもしれないので、あくまでも参考までに。
最近ではエキセントリックな役柄を演じることが多かった岡田だが、本作品では、本来彼が持つイケメンぶりを十分に活かしつつ、コメディリリーフとしても、いかんなく能力を発揮しているのは目新しい部分で、相変わらずの透明感を醸し出している清原との凸凹コンビは、本作品を引っ張るには十分なもの。
オリジナルにあった、とある出来事の撮影についても、そつなくまとめられており、ファンタジーと現実との境をギリギリ攻めた設定は、オリジナル同様面白く、ファンタジー寄りのラブコメディとして悪くない仕上がりではあるが、どうしてもオリジナルと比較すると、全体的に薄っぺらくなってしまっていることから、オリジナルで感じ取れたカタルシスが弱くなってしまったため、オリジナルに軍配を上げざるを得ない一作。

誰かの大切な人、あんなんて言うな。
ぶみ

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