ぜんぶ、ボクのせい
こんないい子にこんな事言わせないで
親や環境を選べずに生まれる子供。
上西監督の「ひとくず」を思い出した。
あちらとは違い本作の毒親は子供が可愛くない訳じゃない。
その分違う意味での残酷さがある。
施設を逃げ出した顔も覚えてない息子をベタベタと可愛がり、自らが甘えて信頼させてから突き放す。
手で追いやりながら息子を拒絶していく場面は辛すぎて涙も出ない。
この母親を演じた松本まりかの女としての弱さと駄目さの演技が凄すぎる。
男にも息子にもその場の優しさはあるし気も効く。
自分が“嫌われない”ための必死な努力が身についた弱いくせにやりたいようには絶対にやる勝手などうしようも無い女。
この人のそれまでの人生も彼女なりにかなりのトラウマがありそう。
このシーンの優太の泣き叫ぶ声に胸が張り裂けそうだった。
そこからのオダギリジョー演じるおっちゃんとの出会い。
社会からはとんでもない2人に見えるだろうがやんわりと愛情を深めて行く。
オダギリジョーのこの役はハマりすぎ。
ゆる〜く駄目だけど繊細な人。
心に傷のあるちゃらんぽらんなホームレス。
重すぎずに観る側を引き込んでくれたおかげで、このテーマを時折肩の荷を降ろしながら鑑賞することが出来た。
内容としてこの作品には全く救いが無い。
何故ここまでこの人達が不幸にならなければいけないのだろう?
近い環境でも誰かもう少しでも理解者がいれば…
少しでも何かが違えば…
優太の叫びと表情
誰かのせい、と言わない
ぜんぶ、ボクのせい。
こんな事、本当にこんな子供に言わせたくない。
「生まれたきた、ボクのせい」
「存在している、ボクのせい」
と心の中で言っているようで堪らない。
優太の責任感と絶望が詰まっている。
個人的にはエンドロールの音楽との調和が自分の心の中で取れなかった。(ツレも同様だったらしい)
キャスト全員素晴らしい演技。
大好きな若葉竜也さんがあらすじを読んだ時点で「あの役なんだろうな」と思っていたけど想像通り。
上手すぎるのでこの作品ではシーンが短くてファンの方には良かったかも。