櫻イミト

妖花アラウネの櫻イミトのレビュー・感想・評価

妖花アラウネ(1928年製作の映画)
2.5
ドイツ幻想映画の古典。主演は前年の「メトロポリス」(1927)でマリアを演じたブリギッテ・ヘルム。原作は『プラーグの大学生』のハンス・ハインツ・エーヴェルスによる同題のゴシック・ホラー小説(1913)で、本作が3度目の映画化。監督は「プラーグの大学生」(1926年リメイク版)のヘンリック・ガーレン。

ブリンケン博士は死刑囚と娼婦を使った人工授精実験を成功させる。誕生した女児にはアラウネ(グリム童話に登場する無罪の死刑囚の下に生じる魔法植物)と名付け自分の子供として育てる。アラウネは美しく成長するが。。。

当時は人工授精が幻想の業であり忌まわしいものとして捉えられていたのだと思われる。なのでアルラウネの存在は”禁忌の人造美女”であり、その設定だけでゴシックホラーとして成り立っていた。しかし現代視点で観た場合、医者が娼婦に養女を出産させ独占しようとする物語となり、忌まわしくはあるがベクトルが違う。同時代にのみ通用した忘れ去られていく一本だと思う。ただし映画史的価値は高い。

「妖花アラウネ」の1950年版にはキャストにシュトロハイム監督の名がある。いつか観てみたい。
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