モモモ

CLOSE/クロースのモモモのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.0
田舎で幼馴染として育った2人の少年。
ごっこ遊びに興じ、花の中を駆け、笑い合い、陽が沈む前に同じベッドで眠る。
常に「陽を捉え続ける」撮影が二人の鮮烈な日々を彩る。
小学校への入学で二人の関係の全てが変わってしまう。
片田舎で愛情と理解のある家庭で育った二人にとっては、小学校は初めての「規範」であり、旧時代的であり多様でもある価値観の中に晒される環境であった。
女子達からの無邪気で(だからこそタチが悪いのだが)身勝手な質問と男子達からのホモソーシャル・コミュニティに晒されて、一人は拒絶し、一人は己を貫こうとする。
細やかな拒絶が徐々に「本気の喧嘩」になってしまうシーンが切なく、虚しい。
幼い彼ら自分の感情を、嗜好を、言葉にする事が出来ない。
様々な感情は涙となって二人から溢れ出す。
中盤のある展開を境に、この映画は「陽を捉える」事をやめる。
多くを語らずとも雄弁に物語る演出に心を奪われつつも、作品を包むのはどこまでも晴れない暗雲のみ。
ホッケーチームに馴染み、学校のホモソーシャルコミュニティにも溶け込んだ少年には「男性社会」を生きる才能があったのだろう。
しかし、彼はどうだったのだろうか。
他の友人と遊べば笑うし、兄からの気遣いで心が癒される瞬間は確かに存在する。
しかし、真の癒しが訪れる事は2度と無い。
喪失と自分の罪(彼の責任ではなく、彼にそんな態度を強いた社会的に規範の所為なのだが)を受け入れた時、怯える少年は抱擁される。
全てはもう手遅れで、取り返しはつかない。
それでも人生は続き、少年は一人で進む。
あの鮮烈な陽に包まれた日々を、振り返りつつも。
モモモ

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