tacky

密会のtackyのレビュー・感想・評価

密会(1959年製作の映画)
4.0
冒頭のワンカットの長回し、わずか70分の作品の10分をかけて、ラブシーンを撮るなど、中平康監督の技術が溢れる作品。

物語は単なる昼メロの範疇をでないのだが、
遠景を多用し、遠ざかる人、近づく人の移動を観せるカット。
突然の電話着信音、真夜中の時計の時報、お手伝いの娘の感高い声、などの耳障りな雑音の多用による主人公を追い詰める演出。
俯瞰から人と周りの状況を魅せるカット。
などなど、素晴らしい技術が繰り広げられる。

特に、ヒロインの帰宅から遠景で夫の影を小さく捉え、ドア越しの会話、時計の時報で、10時になっていた事を表すなど、この夫婦の冷め切った関係を的確に表現するところと、
クライマックスの駅のシーンの、一瞬の俯瞰ショットで真実を観せ、ラスト最後の五分間の坂の長回しで終える。(老婆と赤ん坊のショットが素晴らしい。)

中平監督は、同期の大島渚や増村保造に比べて、過小評価されているが、私は市川崑かこの人かどちらかが、日本一のスタイリッシュな監督だと信じて疑わない。
それだけに、名もない70分のこの映画の素晴らしさは、筆舌尽くしがたい。
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