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ホワイト・ホット アバクロンビー&フィッチの盛衰の821のレビュー・感想・評価

4.0
Twitterで評判になっていたので気になって鑑賞。非常に面白かったです。アバクロがこんなに訴訟等社会問題を引き起こしてたなんて知らなかった。勉強になりました。

アバクロは私が中高の時にも流行ってて、袖長すぎウエスト細すぎ (そして高い) で自分が着られる服ではないな、お呼びでないな感を感じ取っていたのですが、企業の姿勢的にこういう背景があったのか、と大変納得。当時は、米国ブランドなんてみんなこんなサイズ感なのかな?と思ってたのですが(そんな訳ない)、数年後にアメリカのアメリカン・イーグルでかなり多様なサイズ展開を見て驚いた記憶があります。思い返せば、アバクロが「排他性」を企業理念に置いていたのを目の当たりにした瞬間でした。
他にも、アバクロかホリスターかどっちか忘れたのですが、店内の照明が暗すぎて衣類の色が黒か紺かわからなかった時、店員さんに聞いてみたら「紺だから。うちは黒なんて置かないから」という返しがきて「つ、強気〜」とびっくりした記憶があります。なんか過去に自分も抱いた違和感の正体がストンと腑に落ちるようなドキュメンタリーでした。

たしかに、ファッションブランドなんて顧客層をイメージしているだろうし、ある種の排他性は孕んでいるはず。高級アパレルなんてそれが特に露骨で、高級な価格感で消費者を選んでいるんだから当然ですよね。
今回アバクロが問題になったのは、ブランドの主なターゲット層がティーンや若者だったことと、「アバクロ」というネームバリューが大きくなりすぎて若者の間でその排他性が「カルチャー」となってしまっていたこと。排他性が人種にも及び、従業員を人種に基づく差別したこと。そして、その「排他性」をCEO自身が大々的に口にしてしまっていたこと。そんな仕組みがとても分かりやすく紐解かれていました。

また、時代がDiversity&Inclusion に舵を切る中、その流れに乗らずExclusionにしがみ続けた企業の成れの果てかと。アパレルに限らず、いろんな側面で目にする事象でもありました。

「あ〜、昔アバクロ流行ってたよな、あの紙袋覚えてるわ」「そうそう、アバクロの店員ってほんと特徴的」そんな軽い切り口から、企業のブラックな側面を映し出し、現在を紹介する。とても入り込みやすく分かりやすい作品でした。面白かったです。

一つ気になったのは、アバクロのCEOに対する扱い。確かに、「排他的」社風を作り出し、さまざまな法的責任を負った当事者だとは思いますが、彼が公にしていないセクシュアリティにまで周囲が堂々と言及してもいいものなのか?(特に彼はセクハラ関連の訴訟を抱えていなかったし)「失敗した美容整形」についても揶揄するような表現が沢山あったし、悪者認定した人に対する批判が、批判すべき対象から外れたところまでに及んでいる気がして、そこはモヤモヤしました。
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