きよこ

ロストケアのきよこのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
5.0
初見。ロストケアの本当の意味を知る。ああ、そういうことか。なんだかやけに腑に落ちた。

この映画はかなりリアルで事実だけを淡々と描いてくる。介護される人。介護する家族や周りの人たちの言葉。。。ひどく心を抉られ、見透かされる瞬間が何度もある。でもそれを隠して黙々と善人を演じているのが私たちなのだから。

もし、認知症になったらどうする?よく話題に上がる話。重い病気になったら早く死にたいとわたしも思う。老いて、動けなくなって、何もわからなくなって、何もかも奪われていく。失っていくことを恐れない人間などいないだろう。




若年性認知症に侵された父のことを思いだす。3年前の事。いつかレビューに書いたけど。父の人生を終わらせたのは私かも知れないと自責の念が付き纏っている。進行する認知症の父の介護に疲弊する母。急変してICUに運ばれるが、手の施しようがないという。自宅で看取ることを決めた家族。そのイニシアチブをとった私。介護も医療も知り尽くしているからこそ、全てを背負った。何度も何度もこれでよかったのか?これでよかったのだと強く思い込み、今も自問自答し続けている。


人格も尊厳も優しい言葉も無くなってしまった父にどんな形でも生きていてほしいと願えばよかったのか?そんな残酷なことができるの?

いや、父はもっと生きたかったではないか?と。


父の旅立ちを看取り、家族にはほっとした気持ちもあった。正直な気持ちだった。それほど疲弊し、すり減ってしまうのが介護だから。

映画を観ながらいつのまにかとめどなく嗚咽していた。


今は安全地帯にいても、いつ穴の中に落ちてしまうかも知れない。。。


生きる権利。死を選ぶ権利。「月」「PLAN75」を経てこの映画は傑作でもっと評価されて欲しい作品です。
きよこ

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