zhenli13

ソーセージ競争のzhenli13のレビュー・感想・評価

ソーセージ競争(1907年製作の映画)
4.0
この日観たアリス・ギイ作品の中で最もよかった。何の含蓄も無い狂騒に終始するのがまたよい。『キャスターつきベッド』以上に市井の群衆の圧倒的な流れが強調され、スラップスティックなアクロバット芸が徹底している。さまざまなロケーションの妙を生かし人々がぶつかりまくり転げまくり犬も舞う。ピーテル・ブリューゲルの農民や子どもの群像のような、具に眺めるほどに興味深い人々の挙動。機関車に乳母車が轢かれるシーンは『文化生活一週間』で機関車に派手に破壊されるDIYハウスへ派生したのかも。アフタートークで新垣隆氏が『セブン・チャンス』に言及していた。ギイが嚆矢であったかわからないが、キートンも彼女の表現に影響されているに違いない。『セブン・チャンス』は長編映画にするためか前半はキートンのアクロバット芸を封印してややダレるのに対して、『ソーセージ競争』はアクロバット追いかけっこに徹し短編の矜持を保っている。最初と最後に主人公の犬のアップが配され構成に締まりが出る。

川越スカラ座 弁士・伴奏付き「アリス・ギイ短編集」上映会にて
zhenli13

zhenli13