見たい聞きたい言いたいチカコ

夢の見たい聞きたい言いたいチカコのレビュー・感想・評価

(1990年製作の映画)
4.5
黒澤明監督の「こんな夢を見た」で始まる8話オムニバス。

天気雨が降ると必ず、必ず、思い出すのが第一話「日照り雨」の「狐の嫁入り」シーン。
子供の頃にテレビで見て忘れられなかったあのシーンを、フォロワーさんのレビューみて思い出し30年ぶりに視聴!!
そしたら行列の基本的な動きは記憶の通りなんだけど、ディテールが全然違って、記憶の数十倍も美しくてびっくり。子供の頃は狐の行列がそりゃもう怖くて不気味で、でも美しくて、怖いのに目が離せない、そんな感じだったけど、大人になった今見ると、ただただもう、美しい…。
なお記憶の中ではモノクロだったんだよな。実際はめちゃくちゃ色鮮やかで、なぜモノクロで焼きついたのかは謎。

第二話「桃畑」も超色鮮やかで。夢とは言え、なんでこんな独創的なストーリーを思いつくのか信じられないし、それを実写で再現できちゃうのももう変態かよと思うくらいで、黒澤明ってすごい人なんだなあ〜と。
死ぬまでには「七人の侍」を見たいと思って大事に取ってあるけど、いつ死ぬかわからないから早く見なきゃ。

第三〜六話は、第一・ニ話ほどの衝撃はないものの、どれもすごく「夢」。所々、宮崎駿の映画のシーンを思い出す。第六・七話は東日本大震災の後に見ると…なんかもう…身震いしかない。そして最終話を見終わると、薄暗い第三〜七話の役割がわかる。


狐の嫁入りしか覚えてないなぁと思ってたけど、第七話「鬼哭」のラストシーンは覚えてた!!スローになり、シルエットになり、鬼の言葉が大きく響く演出がほんとにほんとに最高。


最終話の川のせせらぎはゴッホの絵よりも美しかった。ただお爺さんが喋りすぎてて違和感あった。あんなに美しい里の風景を背景にして、一から百まで言葉で言わなくていいのになぁ、と。宮崎駿ならやらないだろな。

お葬式シーンは良かった…。辛いことを全部洗い流してくれるパワーに満ち満ちてる。

厳しくも色鮮やかで美しい自然の中で、人は本来、慎ましく、決して驕らず、自然の恵みに感謝をし、一生懸命働いて楽しく生きて、村人からお疲れ様!と祝福されて死んでいくもの。と言いたいようだ。
そう思うと、戦争やら放射能やら、欲を出して自ら世界を破滅させ、鬼になってから後悔して苦しむ人間達の世界が、色のないほんとに無意味で虚しいものに見えてくる。

自分が生まれるよりも前に倒れたはるか昔の旅人に、そうとは知らずに花を手向けるような村の生活が、監督の思う世界の理想なんだと受け取った。

80歳の監督の、説教くささというか、80歳なのに割と青くささもあるというか、、でも最後の華やかな葬列はどこまでも明るくて…ふわふわと不思議(語彙力足りず)。

この超有名監督の映画を他に一つも観てない私には評論などできませんけど、ただ思うことは全部書いとく。



ずーっと口開けて見ちゃう映画。
で、絶対スマホやタブレットで見ちゃだめですね。少しでも大きい画面での視聴を強〜くお勧めします。


夫の感想は「これすごく……眠くなるんだけど…」でした。