Sayawasa

大いなる自由のSayawasaのネタバレレビュー・内容・結末

大いなる自由(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

フランツ・ロゴフスキの名演に拍手喝采。「希望の灯り」に続き、瞳も声も、唯一無二すぎる。
脚本も時間軸の持って行き方も、描かれる関係性も数少ないBGMも、いずれもとってもよかった。準主役がストーリーに与える影響が大きくて、深くて、好きだった。

抱きしめる・抱きしめられる、そして抱きしめ合う。時間軸と立場、関係性によって同じ行動が別の意味を持つところがたまらなくグッときた。

最後の方は、ヴィクトールの行動が「ショーシャンクの空に」を彷彿とさせたのと、自分が罰されてきた要因があっさりと、簡単に当たり前のものとして受容されれていることに対するハンスのやるせなさを、沸々と想像せざるをえなかった。
得てきた苦しみや仕打ちがいかに無価値だったかを見せつけられるような地下のシーンに、フランス語で愛を語るBGMを持ってくるあたりの容赦なさ。

同性愛者が認められ始めたのもつい最近。結局、嗜好において何が「善い」「悪い」かは(もちろん人を傷つけうるものは避けられるべきだが)、社会規範にどれだけ摩擦なく接合するかでしかないと強く、強く感じた。そして同じだけ感謝したくもなる、たまたま生まれ持った異性愛者という嗜好が、たまたまこの社会とマッチしていたという幸運に。

「異性愛、ないしLGBTQが認められる。では、ペドフィリアは駄目なの?世の中には獣に対する性愛保持者や死体愛好家だって存在するという。異性愛と同様に同性愛が認められる昨今、他に排除されるものの行き先は?」
(選択の余地のない子女の精神に測り得ない影響を与える点、感染症や動物愛護の観点から問題がある点、対象に到達するために殺戮の危険性を孕んでいる点など、個人的にはざっと考えるといくつか理由はある。個人的には理解できない、相容れないと感じる。それでも)この種の話に触れるたび、朝井リョウの「正欲」が頭にチラつく。

「多様性を認めましょう。」
「みんなの趣味嗜好をインクルージョンしていきましょう。」
そんなの、本当は綺麗事なんだって、マイノリティは社会規範に包含されうるかどうかをいつも被判断側でしかいられないんだって、改めて考えさせられる。

ポスタービジュアルにおけるシーンの選定が素晴らしいと感じた