Jun55

ザ・ホエールのJun55のレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.3
先ずは、アカデミー賞主演男優賞、Brendan Fraserの演技を観たいとの思いで劇場に入ったのだが、映画全体もとても感動的で良かった。
(Rotten Tomatoesでは厳しい目なのだが)

主人公の置かれた立場は、アメリカでは珍しいことではなく、Obesityは大きな社会問題。それは、健康そのものだけでなく、医療費の問題、その社会的な差別、また精神的な原因での過食症等。
( Michelle Obamaがこの問題への対処のためにキャンペーンを行ったことは有名な話)
また、新興宗教(キリスト教原理主義者)、それから発する性差別(LGBTQ問題)、若者のSNS問題、崩壊する家族等。
ある意味、アメリカの社会的な負の部分が詰め込まれている映画なので、それを思いながら観ていたからか、主人公の置かれた立場、感情にすっと入っていけたのかもしれない。(NY駐在時に驚いたことのひとつは、高額な医療費問題。保険に入れず、高額医療費が払えず個人破産する、また、高額の医療費を恐れて救急車を呼ぶことを拒否するケース等々、それが日常化していることの恐怖を感じた。一言でいうと、アメリカは社会のセーフティネットが極めて脆弱)

少し面白いと思ったのが、TVの中で2016年大統領選の共和党予備選が登場してくること。まさにDystopiaの世界に突入していく最中であり、観客には一層憂鬱な気持ちにさせる効果があるのだろうか。

登場人物全てが、何らかのマイノリティに属し、各々が孤独を感じながらも、どこかで繋がっている、繋がろうとしている。
ここに人間の温かさを感じてしまう。
(特に父娘のふとした会話、繋がろう、という思いに感涙)
コロナ禍での人との繋がりの喪失、政治、価値観において分断された社会…
環境的には負の部分があったとしても、人間の真の部分は性善説であり続けるべきだ、と強く感じた。
それが人間の強さでもある。

元に戻ると、 Brendan Fraserの演技は圧巻で、複雑な感情をうまく表現している。これは一見の価値あり。
Jun55

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