金宮さん

(ハル)の金宮さんのレビュー・感想・評価

(ハル)(1996年製作の映画)
4.5
めーーっっちゃ可愛い作品じゃないですか(^ー^)
森田芳光監督、こんなこともできるのか。監督のフィルモグラフィーで異彩のキュート。大好きです。

パソコン通信の趣味フォーラム。今で言うとLINEのオプチャみたいなものかしら。映画について語り合うチャットルームで出会った(ハル)内野さんと(ほし)深津さんが、メールのやり取りで距離を縮めていく。

インターネット上でのやり取りが恋愛に発展していくストーリーはいまやたくさんありますが、目のつけどころとしては相当早い方だったんじゃないでしょうか。(例えば『ユー・ガット・メール』より3年早い)

ナイスアイデアを思いついた時点で、そこにどう味付けしていくか。森田芳光監督は(ハル)と(ほし)の現実での出来事も淡々と描きつつ、その後送り合うメールテキストの内容をもって心情をがっつり描写するという手法をとりました。

例えば(ハル)の正体を謎のままにしつつ居住地は教えないことで、実は近くにいる?的にドキドキさせるスパイスもあり得たと思います。そういったエンタメにブレず、真正面に丁寧に恋愛模様を描いていくことにしたんでしょう。観てる我々としても「その出来事をそう捉えたのねー」と(ハル)と(ほし)に愛着が湧き、自然と2人を応援してしまいます。

Wikipedia情報によると、PC画面テキスト演出の多用は賛否両論だったとのこと。えー!否があったんですね。。とってもよかったのに。

文体から感じる誠実さや可愛らしい感じに、お互いが惹かれあうのも納得の説得力。他にも2人でテンションあがって同じ顔文字(^ー^)を投稿しあう感じとか、距離が縮まっているのをチャット上だけで表現する手段として抜群。LINEでいうとスタンプ連打に似てるかな。

「ゴールドシアターの茶色いソファで、ミルククセーキを飲んで時間をつぶすのが好きなんだ」文体におや?と思ったところ、やっぱり(ほし)はハルキストでした。細かい仕掛けも上手で楽しいです。

『黒い家』と同じ監督とは思えない。とっても爽やかな気持ちになれる万人におすすめな作品です。

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・「女性で名乗るとたくさんメールがきちゃう」「自分から下着の色をしゃべる釣りっぽいアカウント」など現代SNSもやってることおんなじだ、と思う描写がチラホラ。一方Filmarksは平和でいいなーと思う今日この頃です。

・透明感という表現は深津絵里さんの形容としては凡百すぎてあまり使いたくないですけど、今作に関してはもうほとんど透明人間でした。

・気持ちがもっとも昂る新幹線のハンカチのシーン。(ほし)が赤い服を選んだ理由を考えるとぐわーーってなる。作中で赤い服が印象的なあの人と(ほし)の関係性を想像して。

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「恋愛はもう一人の自分を選ぶことなんじゃないかな。こういう自分になりたいな、とか。」

「つき合ってた人と別れました。結婚観は面白いと思ったけれど、その人を自分にしたくなかったのです。」


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金宮さん

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