ぶみ

PLAN 75のぶみのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.5
果たして、是か、非か。

早川千絵監督、倍賞千恵子主演による、日本、フランス、フィリピン、カタール製作のドラマ。
満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が施行され、制度に携わる市役所職員や、制度の対象となる高齢者等の姿を描く。
ホテルの客室清掃の仕事を解雇され、「プラン75」の申請を検討する78歳の主人公を倍賞、市役所職員を磯村勇斗が演じているほか、「プラン75」のコールセンター職員として河合優実、高給料であることから「プラン75」関連施設に転職する介護職のフィリピン人女性としてステファニー・アリアンが登場。
物語は、それぞれの立場にいる人々の視点で描かれる群像劇の体を成して展開するが、倍賞を筆頭に皆圧巻の演技であるとともに、「プラン75」の販促方法は細部まで作り込まれており、本当にありそうなもの。
また、申し込むと一律に支給される10万円であったり、コールセンターとの通話時間が限られていたり、はたまた本人のみの同意で申し込み可能であったりと、いかにも時の政権が考えそうな制度設計がリアリティをアップさせている反面、関連施設のセキュリティがガバガバで、若干チグハグな面が見られたのは残念なところ。
そんな中、最大のポイントだと感じたのは、冒頭のシークエンスが終わった後に浮かび上がるタイトルロゴで、イメージビジュアルでは、くっきりとしたフォントであるのに対し、映像では「75」がボヤけており、これはたまたま75歳で区切っているものの、年齢問わず、誰にでも降り掛かりそうな出来事であり、皆で考えてほしいと訴えるメッセージであると感じられたこと。
そのせいか、何かしらの正解を導き出すものではなく、モヤッとした結末を迎えることとなるが、テーマが重いだけに、これはこれで悪くない。
何より、観客の年齢層が高かったのが印象的である中、終了後、前を歩いていたグループの一人から発せられた「あんな風に楽に死ねるなら、いいね」という言葉が忘れられない一作。

死者を忘れるな。
ぶみ

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