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MEG ザ・モンスターズ2のsanbonのレビュー・感想・評価

MEG ザ・モンスターズ2(2023年製作の映画)
3.5
今作は「MEG」シリーズの第二弾という事で、ある部分が前作を遥かに凌駕する程のパワーアップをしていた。

何処がパワーアップしているかって?

そりゃ、もちろん"ツッコミどころ"である。

もう全編総ツッコミと言っていいほどに終始いい加減過ぎる内容には流石に驚かされた。

まずMEGと言いつつ「メガロドン」が全然フォーカスされていないのは最大級の欠点だ。

前作ではたった1匹(実際は2匹)のメグに対して大苦戦していたものが、今作は3匹同時のエクストリームアタックを仕掛けられているという事で、本来ならこれ以上なく絶望的な展開の筈なのに、不思議なくらいに恐ろしさがまるで表現されていない。

そもそも、メグの特徴というのがその巨大さだというのであれば、今作ではメグの中でも更に規格外の巨体でもでっちあげて、その1匹が大暴れする内容にでもすれば良かったと思うのだが、そうではなく頭数を増やす事でスケールアップを図った割にはそれを全然活かせていない。

というか、根本的な話をしてしまうと、本シリーズはその大きさというものをあまり体現出来ていないので、結局他のサメ映画との差別化が出来ておらず、しかもデカさが中途半端なせいで基本捕食は丸呑みになってしまうもんだから、サメ映画特有のスプラッター感は失われているという、むしろデメリットにすらなってしまっている気がする程、せっかくの題材を活かせていない。

それこそ、本当のサイズ感は劇中のもので正解なのかもしれないが、色々とデタラメな要素がかなり悪目立っている作品なのだから、ハッタリを効かせるべきは正にここなんじゃないの?と思ってしまう。

とにかく、デカさがコワさに変換されていない下手くそさはそんな感じで今作でも健在であった。

その上で、今作はぶっちゃけどうでもいいような追加要素で肉付けされまくっていて、もうメグが主役の映画ですら無くなってしまっており、しかもその追加要素も全てが中途半端で、これではもう贅肉でブクブク肥え太った"クソデブ映画"と呼びたいほどである。

特にタコはマジでいらんかった。

仰々しく出てきた割には全貌すら現さないからタコだろうがイカだろうがどっちでもいいし、なにか重要な展開に絡む訳でもないし、こいつの登場で凄まじい被害が巻き起こる訳でもないし、ただの賑やかし要因でしかない分テンポも悪くなるしで、タコのシークエンスがまるまる無駄でしかなかったとしか言いようがない。

あと、ツッコミどころが多い作品はごまんとありはするが、ここまで自然の摂理に反していたり、体の仕組みをまるで無視したりするのは、実写映画ではやってはいけないと思うのだ。

深海7000m以下での生身での船外活動なんかは正にその最たるもので、実際にどうなるかを検証した記録は無いにしても、いたいけな子供でさえ疑問に思うようなデタラメ展開をあまりに堂々とやりすぎなのである。

確かに、水を多く含む物体は強い水圧がかかっても密度に大きな変化は無いと言われているし(もちろん本来なら肺は例外なく潰れるが)、水温も水深約1000m以下からはどれだけ潜っても2〜4℃で一定になるとは言われているから、短時間の活動であれば実際に可能なのかもしれない。

でもさ、マスクにヒビが入った女性クルーを水圧で殺すシーンとかやっておいてさ、生身で泳がせようって思えるのはさ、この区間で別々の脚本家が書いてるのかってくらい整合性がとれておらず、流石にそれは神経疑うよねって話。

その上で、完全丸腰の生身の方が鼻血一発垂れ流すだけしか人体に影響がないってのは破綻の域を超えている。

また、深海にはメグとタコの他に、見た目はどう見ても陸上生物っぽい四足歩行をする謎の生物がいるのだが、あれは何億年もの間一切姿形を変えずにずっと深海に棲息し続けていたとでもいうのか??

それならせめてエラくらいはデザインに盛り込むべきだろ。

そんな事よりも、メグなんかより世紀の大発見してる筈なのにノーリアクションって、海洋研究者の風上にもおけねー。

もうね、何もかもが滅茶苦茶すぎるんだよね。

「ハイチ」が発情期に入って施設を脱走するくだりだって、発信機かなにかで位置情報把握してる筈なのに全く気付かないわ、そもそもそういう想定一切無しの設備具合だわってのにはまあ目を瞑るとしても、10年飼育しておいて発情期が今回初だったの?っていうところからまず辻褄が合わないんだよ。

海底基地も、ちょっとの光ですら深海生物を刺激するという説明を映像で散々見せておいて、一体いつの間に誰にも気取られずにあんな巨大施設建てたんだよ。

ここまでくると、そういうリアリティーラインでやってる前提で観ようにも、流石に限度ってもんがある。

普通は、専門家などを交えて科学的考証を踏まえた脚本作りというものをしていくべきなのだが、今作にはそういった有識者の頭脳は明らかにストーリーに組み込まれておらず、全てが机上の空論、コメディレベルで妄想の中の話でしかないから、どう足掻いても物語にのめり込む事は出来ない。

この程度でお金くれるなら、僕がもっといい本書きましょうか?ってレベル。

ほんとここの製作陣「ジェイソン・ステイサム」を、中華俳優と絡ませられた時点で8割は仕事終わったと思ってそう。

中国資本は、いつになったら脚本に注力するようになるのだろう。

企画自体は面白いものが多いから、本当に勿体無くて仕方がない。
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