sanbon

Gメンのsanbonのレビュー・感想・評価

Gメン(2023年製作の映画)
3.6
圧倒的連ドラ向け作品。

昨年放送された「ナンバMG5」が思いの外楽しく視聴出来た為、同作者が原作の今作には密かに期待を寄せていたのだが、個人的にはちょっと空回ってしまったような印象を受ける作品であった。

まず、不良マンガには系統として2パターンの路線が存在する。

その一つ目が「クローズ」などに代表される、"成り上がり系"の作品である。

この路線の特徴は、悪名高い不良校の頂点、もしくは治安の悪いとされる地域を牛耳る事を目的にストーリーが展開されていくので、基本的には強敵を撃破していく事で物語が前進する仕組みが成されるバトルシークエンスが主体となる為、ストーリーの深みとしてはそこそこで問題無い分、比較的には映画向きのプロットと言っていい作品が多い。

そしてもう一つが「ろくでなしBlues」などに代表される、"不良の日常系"作品である。

こちらは、不良同士のケンカをベースとしながらも、大枠としては偏差値低めな不良ならではな日常を、コメディタッチに綴っていくスタイルの作品が多く、前者に比べても友情や絆といったものによりフォーカスしているのが特徴的である。

その為、こちらは成り上がり系の作品に比べてもよりストーリー面に重きを置く必要があり、仲間が増えていくプロセスにこそ時間をかけるべきであるから、映画のような2時間単発の作品よりもじっくりと物語を描ける連ドラ方式の方が圧倒的に向いている。

そして、今作はというと正に後者のそれであり、映画の尺だけでは絶対的に描き込みに無理が生じてしまうのだ。

それに加えて、今作は恋愛要素も多分に含まれているから、友情と恋愛の2軸をたかだか2時間で捌こうなど無謀にも程がある。

その証拠に、中身がかなり矢継ぎ早でとっ散らかった印象は拭えず、案の定友情や愛情の芽生え、あるいは亀裂が生じる展開がやたら唐突過ぎるところがあり、話の端々に原作から割愛されたであろうエピソードの存在を感じずにはいられなかった。

また、今作は"マンガだから成立する"非現実的なノリがかなり盛り込まれているのだが、それも映画の尺に濃縮還元されている為に畳み掛けるように展開される事となり、"マンガでしか成立しない"ような事柄でだいぶ重ったるくなってしまっており、コテコテしさがやや食傷気味に感じた。

原作は未読の為断言は出来ないが、これもマンガで描かれた展開を端折る事なくしっかり踏襲していれば、ここまでくどくはならなかった筈だ。

そして、下ネタがかなり低俗なのも確実に好みは別れる。

あんな人がこんな下ネタをという楽しみはあったが、それにしてもネタの度合いがあまりにお下劣過ぎて、個人的には若干引くレベルですらあった。

これも、マンガのように脳内補完が出来る媒体ならきっとハマっていたのだろうなと感じる"マンガ特有のノリ"であり、あのテンションはちょっと実写にはそぐわなかったのではと思った。

あと、手ブレを用いた場面転換の手法も個人的には好きになれず、正直ダサいなぁと思いながら観ていた為、その演出が差し込まれる度にいちいち引き潮の如く感情がリセットされてしまい、そこもハマれなかった要因となっていた。

今作は、概ね高評価で他の方には満足度も高かったようで、個人的にはせっかくのいい題材だったので、もっと丁寧な深掘りをして欲しかったなと残念な気持ちが勝る作品だった。
sanbon

sanbon