なだ

ケイコ 目を澄ませてのなだのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.3
先天的に両耳の聴覚障害で全く聴こえないケイコ。普段はホテルのクリーンスタッフだが、女子プロボクサーの一面を持つ。

てっきりケイコと同じ状態を鑑賞者も「聞こえない」世界の演出があるのかと思ったら全く正反対。
沢山の日常音、会話、生活音に溢れていて、あらゆる雑音にこちらが目を澄ませないとケイコの打ってくるパンチを見逃す。

ケイコがなぜボクシングに打ち込むのか?
感情表現が苦手なケイコ
ストイックに身体を鍛える。
リングは自分の拳1つの孤独なスポーツ。恐怖心に揺らぐ心…

弟とその彼女、心配で胸が潰れる思いの母、協力的なトレーナー達。
三浦友和扮するジムの会長との信頼関係が素晴らしい。

ケイコは決して独りではなかった。


今まで色々なボクシング題材の物語を観てきたが、ボクシングは特にメンタル勝負のスポーツであると気がつきました。

『天使派リョウ』という漫画で、リョウの友人がプロボクサーとしてデビューし、1戦勝利しただけで引退してしまう。その疑問が今作で理解できた。

闘う気持ちがなくなったらプロとして試合に出てはいけない。
「相手に失礼だよ」
と優しくケイコに語る会長

コロナ禍で存続が危ぶまれる古い古いボクシングジム。
体調悪化でジムを閉める決意をする会長。
ケイコの試合をネット配信で応援する人々。
コロナ禍の閉塞感に耐えた同時代に何かを打ち破ろうとするケイコの姿が心に残りました。



岸井ゆきのさん(ケイコ)
日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞するにふさわしい納得の演技力。
岸井ゆきのさんに賞を渡した日本映画界はまだちゃんとした目を持っている。
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